一連の報道を受けて、SNSでは、男性を中心に容疑者に共感する声も一部上がったことからも、潜在的に女性蔑視・嫌悪的な考えを持つ男性は少なくないのでしょう。そういった人々と、女性あるいは社会はどのように向き合い、対処すべきなのでしょうか。
「先ほども触れた“加害者性”という観点から考える必要があるでしょう。容疑者は状況的に女性を狙ったといっていますが、犯行時は男性も含め何の抵抗もできない、明らかに自分より弱い立場の人を狙っている。包丁を持った人からしたら、もちろん相手は皆、“自分より弱い人”になります。多くの人が逃げ惑うでしょうから。
私たちは、自尊感情が傷ついたり、自己否定的な感情に苛まれていたりするときほど、自身の加害者性に鋭敏になる必要があります。成熟した大人とは、自身の加害者性に自覚的になりながら、それをしっかりとコントロールできる人だと私は考えています」
斉藤氏は加害者性は「男女問わず、誰もが潜在的に持っている特性」だと言います。最後に、一部でミソジニーやフェミサイドと称される事件をこう総括します。
「容疑者の供述から読み取れる男尊女卑の価値観ですが、こうした価値観をどのように学び、内面化して今回の事件に至ったのかを考えていかなくてはなりません。
もちろん加害行為をした容疑者に責任はありますが、
こうした価値観を無自覚に学んでしまうこの社会にも責任の一端はあると感じています。彼は、この事件の背景にある男尊女卑的価値観をどのように学習し、内面化していったのか。そのプロセスを今一度検証することで、誰もが被害者にも加害者にもならない社会にしていくにはどうすればいいのか、を考える必要があると思います」
<取材・文/目黒川みより>