鈴木は前作『
名刺ゲーム』(’14年)でも、仕事に没頭するあまり他者を傷つける業界人の業を描いた。
「仕事の評価が人生の評価だという価値感が強い我々世代には、仕事に打ち込むことで誰かを傷つけてしまうことに、多少なりとも心当たりがあるでしょう。勝吾もまた仕事のなかで“おもしろさのために人を傷つけていいのか?”と、煩悶します。そして、最後にその答えを見つける……。それは、僕にとっての答えでもあります」
答えは作品を読んで知ってほしいが、そこには希望が見いだされている。そして、良質なドキュメンタリー作品のスリリングな制作過程に立ち会ったような読後感を味わえるだろう。
『僕の種がない』鈴木おさむ(幻冬舎)/1650円
ディレクターの真宮勝吾は、癌で余命半年の芸人・入鹿一太から密着ドキュメンタリーの制作を依頼される。勝吾は作品をおもしろくするために“ある提案”をし、2人の人生は大きく動いていく
【鈴木おさむ】
放送作家。’72年、千葉県生まれ。大学在学中の19歳で放送作家デビュー。バラエティを中心に数多くの人気番組の構成を担当。テレビ・ラジオ番組の構成のほかにもドラマや映画の脚本、舞台の作・演出も手がけている
取材・文/池田 潮 撮影/浅野将司