あと、笑わせ方がオーバーアクションや変顔ではなく、なんだか妙な笑いのツボを刺激されるのが楽しいです。
たとえば、池松壮亮の上司である女性警察官(麻生久美子)は、しょっちゅう職場で前髪を切っています。「あれ、また前髪短くなりました?」「いまトイレで切ってきた」と。これは、麻生久美子が撮影前に、前髪パッツンの写真を突然オダギリジョーに送ってきて、「撮影前なのに、なんの相談もなくいきなりバッサリ髪を切ってる」と面白がったオダギリが、そういうキャラクターにしたそうです(
GQジャパン、9/13配信のインタビューより)。
ホームレス役の柄本明は事件の秘密を知っていそうなのですが、聞き込みにいっても「ほら、押忍(オス)があそこで押忍したから、押忍なんだよ」などと、すべて押忍なので全然わかりません。
オダギリジョー演じる犬は女に目がなく、キャバクラに潜入捜査すると嬢の胸の谷間をクンクン嗅いだりペロペロ舐めたりします。セクハラNGの昨今でも、ギリギリセーフなんでしょう。犬だけに。一平に「そいつさっき自分のウンコ舐めてたんで気をつけて」と牽制(けんせい)されていましたけどね。
ドラマ評論家の評価を見ても、おおむね好評のようです。中には、「センスの押し付け」と書いている批評もありましたが、このセンスがツボに入る人はきっと笑えます。
名優たちのノリ過ぎコメディという点では、わたしの大好きな米映画『
アメリカン・ハッスル』(2014年)を思い出した…というと褒めすぎかな。
愛の尊さも家族の絆も社会の闇も、何も訴えてこない、ひたすらバカバカしく楽しい『オリバーな犬』。役に立たないって素晴らしいことですね。
<文/女子SPA!編集部・マスダ>
女子SPA!編集部・マスダ
女子SPA!前編集長。腸活のおかげか風邪ひとつひかない50代。映画、寺、植物園、ピアノが好き。家族は男の猫と人