「なんとですね、彼とM美さんって大学時代に半年だけお付き合いしてたらしいんです。新婦と出会う前に何かのオフ会で知り合って、一方的にM美さんからアプローチされたらしくて。でも、当時新郎が交換留学の準備で忙しくてなかなか時間が取れず、お付き合いと言っても半年くらいの間にテーマパーク1回と江ノ島デート行ったくらいで、深い関係ではなかったようですよ」

Kさんはまじめな顔で話を続けます。
「彼はそういう事情だったので、ちゃんと区切りをつけたみたいでしたけど、M美さんの想いはそうじゃなかったみたいですね。で、社会人になってから新婦と出会って、その親友がM美さんであることも一応知っていたそうです。でも彼としては終わったことだったので、新婦には言ってなかったみたいです」
とはいえ、親しい人しか呼ばない「ノル」というあだ名で呼んだM美さんに、新婦は不審を抱かなかったのでしょうか。
「後日聞いた話なんですけど、控室で新婦に『なんかさ、M美あなたのことをノルって言ってなかった?』と普段と変わらないテンションで聞かれたらしくて。『そっかー?』とシラを切ったら、『あ、そう』と何とも曖昧な相づちだけ返ってきたそうです。ちょっと怖いですよね(笑)」
それからというもの、新郎はM美さんと過ごした期間を思い出し、自分に曖昧な行動や言動はなかったかと日々思案しているようです。
結婚式ではベテランスタッフの機転に助けられましたが、不安な門出となりそうです。
【他の回を読む】⇒
シリーズ「結婚式の悲喜こもごも」の一覧はこちらへ
【他のエピソードを読む】⇒
「実録!私の人生、泣き笑い」の一覧へ
<文/吉原紅葉>