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介護士が見た、自殺に失敗した人の“その後”。「寝たきりは、想像する姿と違う」<yuzuka×よしむら香月 前編>/2021人気記事BEST5

「自殺に失敗する」という可能性

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よしむら香月さん

 警察庁の統計によると、自殺の手段としては“首吊り”を選ぶ人が圧倒的に多く、ネット上にも「成功率が高い」との情報が多い中、「僕の病棟にいる患者さんは、首吊り自殺に失敗された方がほとんどです」と語るよしむらさん。  後遺症で寝たきりになった患者さんの状態、病院にかかる費用まで、オンラインで話をきいた。 yuzuka:ここ最近、自殺を図ったものの死に切れなかったという方からのメッセージが増えました。みなさん口を揃えて、「こんなはずじゃなかった」「自殺未遂をする前に戻りたい」と話します。障害が残ってしまった方や、傷が残ってしまった方も多いです。  自殺を計画される方の多くは、「自殺に失敗してしまう」という可能性や、死に切れなかったときの、その先を見ていない傾向にあるのではないかと思いました。そこの部分を掘り下げたいと思い、今回はよしむらさんにご依頼しました。まずはよしむらさんが働いている病院について聞かせてもらえますか。 よしむら香月(以下、よしむら):ありがとうございます。僕が働いているのは療養型の病院で、入院されている患者さんの8割が終末期医療、つまりは看取りまでをそこで過ごされる方です。 yuzuka:年齢層はどうですか? よしむら:幅広いですね。一番若い方が14歳、もちろん100歳を超えるご高齢の方もいらっしゃいます。 yuzuka:よしむらさんの作品の中で、最近自殺が原因となって入院する患者さんが目に見えて増えた、という一文がありました。立て続けにそういう方の入院があったのでしょうか? よしむら:そうですね。同じ月に2名入られて、そのときに、半年前にも同じ理由で入院された方がいたことを思い出しました。以前は若い患者さんの入院が滅多になかったので、印象的でした。

「寝たきり」とは“ただ眠っている”だけではない

yuzuka:自殺がきっかけで入院された患者さんについて、伺える範囲で、状態などを聞かせてください。 よしむら:多くは、首吊り自殺を実行した方です。首を吊った後、心臓がまだ動いている、もしくは止まってすぐの段階で家族や友人に発見されて、病院に搬送されて処置を受けたために、生き延びたという方が多いですね。  その状態から蘇生が成功したとしても、蘇生後脳症、低酸素脳症などの重篤な状況に陥ることが多いんです。そうなってしまうと、僕のいるような療養型の病院に入院されることになります。年齢としては、10代の方が多かった印象ですね。 yuzuka:状況としては、いわゆる植物状態。意識が戻らない状態ですね。 よしむら:はい。はっきりと意識がある方がうちに入院されることは少ないので。 yuzuka:首吊りって、自殺の中でも成功率が高いといわれているんですよね。「確実に死ねる」と書かれているサイトさえあるんです。だから、他の方法と比べても実行する人が圧倒的に多い。だからこそ、よしむらさんの漫画に描かれていた、「一命は取り留めたが身体リスクを負った方は自損行為者総数の約60%」という数字に、私も驚きました。  多分、死のうとする人たちの中には、そういった現実を知らない人がたくさんいます。もしくは失敗といっても、もう少し程度が軽いものを想像していたり、仮に「寝たきりになるかも」という思いがあったとしても、よくドラマなどに出てくるような、まるで白雪姫のように美しく眠っているような姿を想像している人が多いんじゃないかなって。だけど私は、その想像と現実にはかなりギャップがあると考えているんです。 よしむら:僕も同じです。
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寝たきりになった患者さんへの介護
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