サッパリした義人さんは、部屋に残っていたワゴンが気になりました。「邪魔になりそうだから外に出しておこう」そう思ったのが悲劇の始まりです。

写真はイメージです。
義人さんは横着をして、トランクス1枚でワゴンを押して扉の外に出ました。廊下はふかふかの絨毯だったため、キャスターが沈み込んで思うように動きません。身体で扉を押さえながら両手を使って部屋の外にワゴンを運び出しました。
「
カチャリ」
静まり返った廊下に響き渡る扉が閉まる音。義人さんは「ヤバい」と思ったそのときにはもう時既に遅し。
そうです。義人さんはトランクス姿のまま、部屋の外に閉め出されてしまったのです。身体で扉を押さえていたはずが、うっかり扉から身体が離れてしまったのです。

写真はイメージです。
「人間焦りすぎると、正常な判断ができなくなってしまうみたいですね。
うちの夫、ワゴンに敷かれていたリネンを身体に巻きつけたんですって」
大笑いしながら紀子さんはそう言います。とても40歳とは思えない身のこなしで素早く身体にリネンを巻きつけます。なんとも心許ない姿になってしまった義人さんですが、最低限、身体を隠すことに成功しました。
その後、どうしたらこの危機的状況を乗り切れるのか考えます。しかし、焦った時の考えほど良い考えは浮かびません。なんと義人さんは別館でエステの施術中の紀子さんの元へ向かうという決断をしてしまったのです。