ランドセルを選ぶ“ラン活”、異常な過熱のカラクリ。完売続出は何だったのか
あちこちで、今年小学校に入学した初々しいランドセル姿の子どもたちを目にします。一方、市場では2023年に入学する子ども向けに、ランドセル売り場がすでに賑わいを見せています。ランドセル選びは「ラン活」と呼ばれる一大イベントになっており、「どのランドセルを、いつどこで買えばいいの?」と頭を悩ませる保護者は多いようです。
――「ラン活」と聞くと、人気のランドセルは発売してすぐに完売するなど、保護者にとって大変なイメージがあります。
Kazumamaさん(以下、kazumama)「そうですね。3・4年前はランドセル市場もかなり過熱していて、入学する1年以上前から予約がスタートし、人気メーカーのランドセルは完売が相次ぐなど、欲しくても買えないという状況でした」
――どうしてランドセル市場は、こんなに過熱しているのでしょうか。
Kazumama「多くのランドセルメーカーが、ランドセル購入の決定権を持っているのは子どもや両親ではなく祖父母であることに着目し、マーケティングを始めたことがきっかけです。子ども向けに販売するのではなく、実際にお金を出している祖父母が納得するランドセルを販売するようになったんです」
――たしかに、お孫さんへの入学祝いにランドセルを買う、という話はよく聞きます。
Kazumama「それまではランドセルの素材は軽くて汚れがつきにくく、価格も安い人工の革が主流だったんです。でも祖父母世代の多くは、人工の革=安物というイメージを持っています。そこで、牛革など天然の革を使ったランドセルが一気に注目されました。
重量もあり、価格も高く流通の少ない牛革をランドセルに取り入れたことは、私にとって驚きだったのですが、そのマーケティングが祖父母世代の『孫に本物を身につけさせたい』というニーズにぴったりハマり、ブームになったんです。いわゆる『工房系』のランドセルメーカーがこのブームの火付け役になりました」
――工房系とはなんでしょうか。
Kazumama「ランドセルは、製造する場所によって『量産系』か『工房系』かで大きく2つに分けられます。一つの工場で様々なブランドのランドセルをつくっているのが量産系です。違うブランドのものも一つの工場で大量に生産して、イオンやヨーカドー、百貨店などで販売します。セイバンの『天使のはね』やハシモトの『フィットちゃん』などが有名ですね。
一方の工房系は自社工場を持っていて自分たちでオリジナルのランドセルを作っています。伝統の製法で職人が一つ一つ作り、牛革や職人の技など、超高品質を売りにしています。有名なメーカーで言えば土屋鞄や鞄工房山本などがあげられます」
――職人が伝統の製法で一つ一つ作っていると聞くと、かなり惹かれますね。
Kazumama「伝統と職人技の工房系に対し、大学や第三者機関などと共同開発して、子どもが使いやすい最新のランドセルを出しているのが量産系です。これはどちらが良い・悪いという問題ではなく、好みの問題になります。
伝統ある製法も魅力的にうつると思いますが、20年以上前の構造のランドセルを機能面で比べると、現在の人間工学を駆使したランドセルでは、現在の方が背負いやすさなどの面では優れています。量産系の方が工房系より背負いやすかったり、丈夫だったりするので、量産系=安物というわけではないのです」
そこで、長年ランドセル業界に身をおき製造から販売まで、業界に詳しい「ランドセルのプロ」こと、kazumamaさんに2023年度のラン活の動きについて聞いてみました。
“おじいちゃん、おばあちゃん”を狙って大成功
職人が作り上げる高品質か、背負いやすい最新構造か
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