――その想いがファンの方へ届いてることがよくわかります。
市原:「組のすべての部署が共闘し、全員で作ってきた作品です」と、断言できる作品ですね。尋常じゃないほどの現場愛にあふれていて、みんな家族のようです。そして、どの現場よりも子どもたちに愛情を注いでいる現場だと断言できます。
――甘利田の一直線な性格や情熱の部分は、市原さんご自身に共通するのではないでしょうか?
市原:確かに、似ている部分もあると思います。コロナ禍のいま、人と人とが顔を合わせて話す時間や、心を通わせる時間が削がれていっているような思いに駆られて、悲しくなることがあります。もちろん守らなきゃいけないルールは守りつつも、誰かが笑ったら笑い、誰かが泣いたら自分も泣けるような、人間臭い人でいたいと思っています。甘利田も、そういった面があります。一見、子どもを突き放しているようなところがありますが、すべては愛情から来ていて、しっかりと意味があるんです。ひとつひとつの言葉が、すべてのシーンにかかってきます。
僕は、愛がある現場が好きです。人生の三分の二くらいを芝居をしながら生きているので、自分についてもだんだん分からなくなってくるような感覚もあるんです。それこそ20代の前半は「自分って何なんだろう?」と、部屋の隅っこでしくしく泣いていたこともありました。今もまだ未熟ではありますが、商売道具は感情だと思っているので、これからもどんどんいろいろな自分を壊しながら、いろいろな自分を生み出していきたいと思っています。
――甘利田は、市原さん自身を後押ししてくれる存在でもあるんですね。
市原:そうですね。子どもに対しても負けたら「負けた」と言って、しっかりと受け止めるんです。認めることの強さというか、「ありのままでいい」と思わせてくれる。自分の愛した人生を生きればいいと、甘利田の心からもいろんなことを学びました。
――今回の映画を通して、届けたいメッセージがたくさんありますね。
市原:見どころがたくさんあるんです。今回は映画ということで、卒業に近づいていくメインテーマがあるのですが、それと同時に学年主任との恋の関係性や、行動が奇抜な甘利田が初めて私服で登場します。これも今までにないところです。
それに青春は、何歳になってもできるところがある。60歳になっても80歳になっても100歳になってもできること。あとはあの時に戻りたいという1980年代へのノスタルジックな感覚。作品の中で精一杯ふりきって暴れていますので、その滑稽な様を楽しんでいただきたいです。
【画像をすべて見る】⇒
画像をタップすると次の画像が見られます
<取材・文/トキタタカシ>
トキタタカシ
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、
インスタグラムにて写真レポートを行うことも。