「あの夜は、お店のあとホテルには行かずに、わかった、今までありがとうって淡々と話して、私が先にお店を出ました。そのあと何度か会社で会うことがあったけど、普通を装いました。連絡もしていません。なんだか悔しかったんです。追いかけるオンナ、みたいになるのが。
でも本当は、
あの別れの夜から心が凍り付いているんです。また誰かとつきあいたいとも思えない。ひとり暮らしの部屋にいるのは寂しいし、よく泣きます」

もともと友達が少ないから誰かに相談できない。普通に仕事はこなすが、生きる気力がない。
「私、バチが当たったんです。考えてみたら翔くんは、とてもいい人でした。こんな薄情でダメな私に何度も好きだよって言ってくれた。どんなとこが? と尋ねると、謎なとこかなって言ってました。どんな私生活なのか見えなくてミステリアスだって。だから惹かれるって」
もう、会社に翔くんはいない。仕事以外はひきこもり、鬱のような症状が出ている。筆者がふと、加奈子さんの不倫は家庭環境の影響かもしれないこと、父親に対して独占欲的な恋愛感情を持ってしまう「エレクトラ・コンプレックス」かもしれないこと、それを自分で認識することで、不倫や略奪愛体質から抜け出していけることを伝えると、加奈子さんはこう話した。
「ああ……うん。もう抜け出したいですね。でも、はじめて本気で好きになったのが、翔君でよかったです。自分をふりかえることができてよかった。え、これからですか? うーん。なにもわからないです。まずはこのむなしい気持ちをなんとか上向きにしていって、
いつか、ずっと自分といてくれる人とめぐりあえたらいいかなあ…。ムリ……ですかね」
まだ弱々しいけれど、でも、少しずつ前を見ようとしている加奈子さん。この失恋からの脱出には、もう少し時間がかかりそうである。でも、元気になりたいという気持ちがあるんだから、もう、ムリじゃない。今度はきっと、お互いの気持ちを育んでいくような恋愛ができるのではないだろうか。
※個人が特定されないよう一部脚色してあります。
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<文/安藤房子>
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