
デビューアルバム「P.C.F」
PSYCHIC FEVERにとってプレデビューシングルである「Hotline」は、一度聴いたらメロディと歌詞が耳にこびりついて離れない。気がつけば何度もリピートしてしまう中毒性のあるこの楽曲のイントロは、今や世界の一大潮流であるトラップ・ソウルテイストでスローにはじまるかと思いきや、彼らの特色であるラップが塗り込められるように重なる。そのままサビまで一気に持っていかれる。
そしてサビの瞬間。それまでタテノリぎみだった身体が、ぐいんと右にカーブを描くように湾曲する。あのうねるようなヨコノリ感。これがたまらない。メンバー7人全員がマイクを持つ彼らの楽曲は、ラップ担当が多いので、基本的にヒップホップビートがサウンドのベースになっている。現行ビートでありつつ、ヒップホップ・ソウルの伝統と懐かしさを感じもする。ソウルやR&Bに対するさりげない目配せをしのばせているあたり、好感しかない。
こういうUSトレンドにアクチュアルな日本アーティストが、デビューするのが、筆者としては嬉しい。世界の音楽トレンド感を見据えながら、それをどうやって日本の音楽シーンに落とし込み、自分たちのファンにキャッチしてもらえるのか。そんなことを割と真剣に考えたトラックメイキングは、聴くところはしっかり聴かせて、ノセるところは徹底的にノセる。
それでいて全体としては非常にキャッチーだから、これは若い世代にウケるのも当然だろう。実際、この楽曲は、2021年はコロナ禍でオンラインでの開催が余儀なくされた「武者修行」のTikTokチャレンジ曲として人気を博した。オンライン開催の逆境を逆手に取り、次世代だからこその感覚で成功に導いた、紛れもないアンセムでもある。
オートチューンで加工された声の斬新さや、電話ですれ違う若い男女の葛藤が歌いこまれた歌詞世界に合わせて振り付けられたダンスは、バズり必至だった。歌っても、踊っても楽しく、愉快で、遊び心のある音楽が、この「Hotline」には詰め込まれている。
他にも、「Best For You」は、特にグループの色がうまく配色されたミディアムチューンで、ヒップホップのビートにR&Bの歌ものが溶け合っている。こうやって自分たちのファン層である次世代に訴求しながら、じわじわソウルの魅力が、広く浸透していったらいいなと、素朴に思ってみたりする。