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宗教2世の中学生が抱えた“絶望”とは。今だから見たい映画『星の子』が教えてくれること

宗教の複雑さそのものを提示している

 この『星の子』の劇中では、テロや殺人事件など、世間を騒がせるような大きな事件は起きない。だが、そのことがむしろ、怪しい宗教にハマるほとんどの人たちは「こうなのだろう」と、想像が及ぶようにもなっている。  側から見れば金銭を搾取し家庭を崩壊へと導くような存在に見えても、当事者からすれば「一時的には」救われていることもある。だからこそ、抜け出すことは難しいのだろうし、単純に悪であると断罪もできない居心地の悪さもある。  カルトに限らない宗教そのもの、またその中の教えや規律の多くは、どれが悪くてどれが良いという区別はつきづらく、グラデーションがあるのだろう。それらを盲目的に信じてしまうのは危険だが、宗教および信仰心そのものが生きる希望になることもあるので、一概には否定もできない。  そのような複雑な事情が世の宗教にはあって、宗教2世の子どもには、より深刻な問題としてのしかかってくるのだろう。そして、この『星の子』が、その複雑さそのものを痛切に感じさせてくれる、何よりも「理解」を促してくれる意義はとても大きい。  ラストシーンは観る人によって解釈の異なる、決してハッピーエンドとは言えない着地ではあるが、個人的には希望はあると信じている。彼ら彼女らを、心から心配してくれる人がいるのであれば。もしくは、激烈な否定をすることなく、相互理解できれば。そして、当事者がいつか「本当に大切なこと」に気づくことができれば、きっと……。 <文/ヒナタカ>
ヒナタカ
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF
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