――3人が共有する共同体意識は独特なものです。磯村さんが理想とする共同体、もしくは、共同生活は、どんなものですか?
磯村:共同体って絶対に無理だと思うんです。人間は、ひとりひとり違うので、手を取り合おうと思っても、どこかに個人がでてきてしまいます。それが亀裂を生むと思うんです。
議長、副議長、オペレーターの3人暮らしでも、亀裂が思わぬ方向に進んでいきます。議長は途中から人間の本能が剥き出しになっていき、これは人間関係の縮図だなと。そう考えると、僕らは一生、運命共同体というのが難しいのではないかと。
――その意味で、3人がとにかく一日中叫んでいる「みんなのために頑張りましょう」の「みんな」とは誰のことなんでしょうか?
磯村:この作品を読んだ読者が、そのことを考えてほしい。それが原作者である山本さんのメッセージだと思っています。だから観客のみなさんに委ねたいところです(笑)。それが映画を楽しむ醍醐味だと思っているからです。「みんな」って何の「みんな」だろうと、ぜひ意見を交わしていただけたら嬉しいです。
『ヤクザと家族 The Family』で意識したこと
――大胆なヌードを披露した北村さん演じる副議長を唖然と見つめるオペレーターの表情が素晴らしかったです。表情で演技をするときに、どんなことを意識していますか?
磯村:意識する感覚はないかもしれません。あの表情は、あの顔をしようということではやってなかったです。
――刑務所の牢の中にいる横顔であるとか、『演じ屋』(2021年)や『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(2022年)など、最近の出演作品を見ると、磯村さんの横顔に何か、真実味を感じました。単純に自然な演技だという以上のリアリティを感じますが、磯村さんにとって自然に見える演技とはどのようなものですか?
磯村:自然な演技については、追求しています。演技をしているけど、自然。でもその自然な演技をしようとしてるのは、演技になってしまう。この訳の分からないループに入るわけです。余計なことをせずに役としてその場に存在できるか、極めていきたいです。
――何かきっかけになった作品はありますか?
磯村:明確に思ったのは、『ヤクザと家族 The Family』(2021年)からです。藤井道人監督と綾野剛さんに出会い、強く意識しました。