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安倍元首相の後継者、94歳ゴッドマザーは甥を指名か。世襲批判に反論も

 安倍晋三元総理が亡くなって1ヶ月あまりが過ぎました。  しかし政治の世界は恐ろしいもの。弔いモードはすぐに消え去り、自民党内は早くもポスト安倍を見据えた権力闘争へと突入しているようです。
 そんな中、驚くべき発言がありました。発言の主は安倍氏の母で岸信介元総理の娘、安倍洋子氏(94)。 『NEWSポストセブン』の記事が岸信夫前防衛大臣の後援会関係者による証言を掲載していました。 <「安倍さんが亡くなったとの一報が流れた後、後援会幹部の一人に洋子さんから電話があったそうです。『もう晋三はいないんですよ。明日から信千代の選挙戦が始まると思ってやりなさい』と声をしぼりだし、『もう晋三は……』と、最後は涙声で聞き取れなかったそうです」>(『NEWSポストセブン』2022年7月9日掲載『【安倍元首相銃撃】母・洋子さん、悲嘆の肉声「もう晋三はいないんですよ」』より)
 死後わずか1日でこのような報道がなされたことに加え、岸信千代(のぶちよ)氏という具体的な名前が挙がったことに明確なメッセージがうかがえます。そこで少し事情を整理しておきましょう。

「けしからん」晋三氏は甥の政治家転身を強烈に反対

 岸信千代氏(31)は岸信夫前防衛大臣(63)の長男で、安倍晋三氏の甥にあたり、2020年10月にフジテレビを退社し現在は父の岸信夫氏の秘書官を務めています。  しかし事は複雑で、もともと岸信夫氏は晋三氏の父・安倍晋太郎、洋子夫妻の三男として生をうけました。つまり“安倍信夫”だったわけですね。  ところが、岸信介の長男・信和氏と仲子氏夫妻が子宝に恵まれなかったため、信夫氏が岸家の養子に出されることになったのです。
 なぜこんなまわりくどいことをしたかというと、岸の名を保持するためにほかなりません。約束通りの養子縁組でしたが、後年洋子氏はこの決断を悔いていたといいます。  そして信夫氏が政治家への転身を決意したとき、強烈に反対したのが晋三氏でした。 <「会社を辞めるなんて、けしからん。元に戻してやる」>(『絶頂の一族 プリンス・安倍晋三と六人の「ファミリー」著・松田賢弥 講談社 p.219より)と気色ばんだのだそう。  そこには“岸信介の後継者”をめぐるファミリー内での熾烈(しれつ)な争いがあったのではないか? そんなストーリーを経たうえでの信千代氏の登場は憶測を呼ぶのかもしれません。

ゴッドマザー洋子氏94歳の影響力の大きさ

 ともあれ、すでに次なる戦いに向け周囲を鼓舞する“ゴッドマザー”の姿が浮かび上がります。悲しみに暮れている暇などない。岸一族の命脈を途絶えさせてはならないという並々ならぬ覚悟がうかがえます。  洋子氏の言葉を裏付けるように、月刊『文藝春秋』2022年9月号に信千代氏のインタビューが掲載されました。  岸・安倍両家の血を継ぐ者としての自身の考えを明らかにしています。政界進出について晋三氏に相談したこともあるそう。事実上の“後継者宣言”なのでしょうか? 今後の動向が注目されます。  こうした一連の動きからうかがえるのは安倍洋子氏の影響力の大きさです。御年94歳ながら、華麗なる一族の意思決定をくだす。  日本の戦後政治の中心であり続けた洋子氏の言葉から、怪物的な存在感について考えてみたいと思います。
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岸信介から洋子氏、そして晋三氏へ
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