正しい情報にアクセスできず、周りに相談しづらい環境があるなかで、LGBTQの子どもたちが過ごしやすい環境をつくるためにできることとは何だろうか。
「カナダの慈善団体THE519の
調査では、LGBTQの子どもたちの希死念慮が下がる要因が一つ明らかになっています。それは、家族の理解です。家族の理解があると、自殺のリスクは93%減少することが報告されています。なので、保護者や子どもに接する大人たちが、接する子どもたちのなかにLGBTQの子どもたちがいることを前提に、アライ(理解者)であることを発信してください。
動画やメディアで目にしたLGBTQのニュースについて話題に出したり、LGBTQにまつわる絵本を家や学校に置くなど、肯定的であることを示すことも重要です。学校で相談していいのか悩んでいる段階でも、居場所があると思えていれば、過ごしやすさはかなり変わります」

※画像はイメージです(以下同じ)
周りに相談できない環境があるなか、悩みを抱える子どもたちはどのように向き合っているのだろうか。トランスジェンダー男性である藥師さんは、学生時代を思い返す。
「私は女の子として生まれ、現在男性として生活しています。幼少期暮らしていたアメリカでは不安に感じることなく過ごしていましたが、9歳で日本に戻ってから、女の子らしくしなさい、と学校で言われることが増えました。トランスジェンダーという言葉に出会ったのが小学6年生です。
ですが、当時は適切な情報を入手することが難しく『ホルモン投与したら30歳で死んでしまう』など、事実とは異なるような噂もありました。中学校では“バレない”ように女の子らしくしながらも、『大人になれないのでは。このまま生きるのは苦しい』と、毎晩布団で泣いていました。その結果、高校2年生で自殺未遂をしています」
LGBTQ当事者の過ごしやすさは、当時と今で変わっているのだろうか。
「今では多くのLGBTQ当事者がインスタグラムやTikTokなどで積極的に発信していて、ロールモデルが増えてきています。とはいえ、私が学生時代の20年前でもテレビでタレントさんはいましたし、画面の向こう側にロールモデルがいるだけでは、まだ自身との生活の距離は遠いのです。
家族や学校など身近に相談できる人がいないなどの悩みは、今の子どもたちからも多く聞きます。子どもたちの半径5m以内にいる先生、友達、保護者に理解はあるのか。そういったところにまで当事者の声が届いていることが大事です」