――どんなことを考えていましたか?
結木:ぼーっとしているんです。都内の喧騒にいるとなかなかできません。デジタルデトックスされたその時間が心地よかったです。
――その意味で子どもたちとの撮影時間も充実したものでしたか?
結木:とても可愛いなと思いました。主人公である凪役の新津ちせちゃんのお芝居を近くで見ていて、まだ何色にも染まっていない今の彼女とお芝居できるのは僕たちだけなんだと感動しました。初心を思い出させてくれる貴重な時間でした。
――新津さんとの撮影中のエピソードはありますか?
結木:カメラが回っていないところでも二人で一緒に泳いでいました。周りからすると現場に子どもが二人いる感覚だったと思います(笑)。
――浩平が凪を抱えて水中に飛び込む場面があります。凪をみつめる浩平の横顔が優しげで、印象的でした。
結木:あの場面には、凪と浩平にしか感じ取れない気持ちがあったと思います。僕も大好きな場面です。凪が持っているトラウマは、浩平だから理解できるところがあります。彼女に対する浩平の優しい気持ちを持つことを心掛けながら演じていました。
――ぎっくり腰になった仲間の漁師を担架で運んできて、窓を叩く瞬間の表情も素晴らしかったです。
結木:演技中には担架を持たずに、ふりだけでよかったんですが、僕はそんなに器用ではないので実際に持って演技しました。
――それで担架を持った手が後ろ手になって、表情がクリアにみえたんですね。
結木:そうですね。
――浩平と島崎遥香さん演じる島のマドンナ・瑞樹先生に海で釣りを教える場面では、「海の上だとどもらない」という台詞が鮮やかでした。しかし陸に近づくとだんだん吃音が戻ってくる。陸と海でどうやって表情の変化をつけていましたか?
結木:ほんとうに海が綺麗だなという気持ちで素直に演じていたと思います。浩平は大人でも子どもでも誰にでも分け隔てなく接することができます。瑞樹先生に対してはあんなにわかりやすく照れるんです。僕自身、どきどきしながら演じていました。
――海辺の結婚式も素晴らしかったです。
結木:まだまだ先のことだと思っていましたが、結婚したくなりました(笑)。あの場面で浩平は、この上ない幸せを掴みました。彼にとってすべてが報われた瞬間です。