
その1:声がしっかり落ち着いている。お腹から出して、現代人の日常会話的ではない。とても意識的に声を出していたと思う。
その2:馬に乗って刀を振り回しても安定感がある。難しいと思うのだが、体幹が鍛えられているのだろうか。その安定感が“武士の鑑”に説得力があった。
その3:他人を貶(おとし)める人たちばかりのなか、最後まで正義を貫いた。自分の子を殺されても復讐しなかった。義時にとどめをさせる状況だったのにしなかった。……という役割を実に清々しく演じきった。
畠山、最期の回に当たり行われた取材会に筆者は出席し、TVブロスWEBで記事をまとめたのだが、中川の台本を深く読み込み適切に解釈して内容のある回答に感心した。
「だからこそ、この先、鎌倉をなんとかできるのは義時しかいないことを、本気で戦い、本気で死ぬことによって義時に示したのだと思います」という重忠の心境の解釈など、取材する側にとって実に取材甲斐のある俳優である。
24歳でこれだけ話せるのはなかなか凄いと筆者は思う。
「(『鎌倉殿』の現場は)先輩ばかりでやはり緊張しましたが、飲み込まれず戦い抜くことを目標にしてきました。誰よりも強く誇り高い畠山重忠という役が毎回、自分を奮い立たせてくれたと思っています」と言うように役に真剣に向き合うことで、自分自身を高めていったのだろう。俳優の魅力が役を良くすることもあるし、役の良さが俳優の能力を輝かせることもある。畠山重忠と中川大志はその両方だったのではないだろうか。