その後も、香取慎吾演じる主人公はそれなりにダメな言動もしてしまうので、「そりゃ旦那デスノートに書き込まれるよな」とも思ってしまうし、さらにリアルでの夫婦喧嘩に発展する様は情けないやらおかしいやらで、やっぱり笑ってしまう。
一方で、香取慎吾が「得意げにトリビアを語る様」は憎めないし、時にはもちろん優しく誠実な面も見せるのでキュンキュンもしてしまう。母性本能をくすぐるタイプの香取慎吾を期待する人も必見だろう。
しかも、香取慎吾は「ずっとここで働いていたんだろうなあ」と本気で思えるほどにホームセンターの従業員役が板についていて、お客さんへのアドバイスの内容そのものも魅力的なので「これを聞いたらなんでも買ってしまいたい」とも思える。そう感じさせるのは、香取慎吾というその人が40代半ばになり、顔にもシワができていたりしていて、良い年の取り方をしていると思える、人生の積み重ねが見えることも大きな理由だろう。
それでいて、香取慎吾らしい、見ているだけでニコニコしてしまう親しみやすさや、底抜けに明るい印象も健在。それでいて劇中の役の性格はちょっと子供っぽくて、見た目が大人になった香取慎吾とのギャップも含めて、主人公のことが好きになれるのだ。
もはや「香取慎吾以外では考えられない」とまで思える役柄だが、市井昌秀監督によると、実際に彼が主演を務めることは脚本を書き始める段階で確定していて、そこには「平凡な日常を生きる香取さんが見たい」という願いもあったそうだ。
さらに市井監督は「香取さんの中にも、わずかにあるかもしれない、自身の弱い部分もぜんぶさらけ出してほしい」と香取慎吾に提案し、これに彼は「思い当たるところがある」などと言い期待に応えたという。
おかげでというべきか、誰もが知るスターである香取慎吾が、良い意味でどこまで「素」なのかもわからないほど、本当に近所にいそうな平凡な男(ちょっとダメな夫)としての弱さを見せていることもまた、ギャップとして楽しめる内容になったのだ。