香取慎吾が、いい年の重ね方してる…!『犬も食わねどチャーリーは笑う』で光るポテンシャル
やや現実離れした展開にも感動がある
市井監督の映画では、やや現実離れしている、人によっては「引いてしまう」ほどの、ぶっ飛んだ展開が用意されていることが多い。今回も同様で、特に「同僚の結婚式」と「妻が勤めるコールセンター」でのとある出来事に、「ええっ!?」と驚いてしまう人は多いだろう。
賛否も呼ぶポイントかもしれないが、そこに至るまでの伏線は巧みに張られているし、周りが引いてしまうほどの出来事は「夫と妻にしかわからないこと」を示していて、さらには普遍的な「生き方」や「願い」の寓話(教訓を含む物語)にもつながっている。観客それぞれの人生にフィードバックできるかもしれない学びを、一度観たら忘れらないインパクトのある「飛躍」をもって提示していると言えるので、筆者は大いに肯定したい。
もっとわかりやすく言えば、展開そのものは「そんなことしないでしょ」「あり得ないだろう」と思ってしまう一方で、「でも言っていることは正しいし、何なら感動もした」という印象が本作および市井監督作品にはあり、それも楽しんでほしい。
旦那デスノートに殺意を書き込んでいた一方、常識人な面も見せていた岸井ゆきの演じる妻が、クライマックスではっきりと強い意志を持つ女性として描かれてることにも、感動する人もきっと多いはずだ。
面白い2つの裏設定
最後に、劇中では描かれていないが、知って観てみると面白い「裏設定」を2つ紹介しておこう。
1つ目は、劇中の夫婦が「何かを買うときに相談しながらモノを買う」習慣がある、ということ。そう思うと、家の中にある家具それぞれに夫婦の「これまで」が垣間見えるようだし、同僚の結婚式から帰ってきた後のとある描写からも、「ああ、この2人はずっとそうだったんだろうなあ」と納得できるだろう。
2つ目は、タイトルにもなっている「チャーリー」という名のフクロウは、ホームセンターでなかなか買い手が見つからなかったため、夫婦が家に迎え入れたということ。そのように本来は優しいはずの夫婦の、滑稽でもある喧嘩をただじーっと見つめたりしているチャーリーは、映画を観て笑ったり怖がったりしつつ、客観的にも捉えたりする、我々観客に近い存在だろう。そのチャーリーと同じ目線で、ぜひ楽しんでほしい。
<文/ヒナタカ>
ヒナタカ
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF






