「
布団でキスしようと寄り添ったら、首をガッとつかまれて怒鳴られました。『洋平さんはウキウキしてるかもしれないけど、私はそれどころじゃないの! いっぱいいっぱいなの!』。そう言ったあとは僕の服をぎゅっと握りしめ、小刻みにブルブル震えてるんです。こりゃあ駄目だと思ってそのまま寝ました」
その日を境に、凛子さんは定岡さんとのセックスはもちろん、身体接触も避けるようになる。しかも凛子さんは、定岡さんと一緒に過ごす時間をまったく作らなくなった。
「凛子は土日をすべて同性の腐女子友達との予定で埋め、僕と過ごす時間を徹底的に削りました。もう少し一緒に過ごす時間を確保してほしいと言うと、何を言ってるんだという表情でこう言われました。『家でずっと一緒にいるのに、そのうえ一緒に出かけるなんて理解できない。
私はあなたと一緒に何かしたいわけじゃない。私の時間を盗まないで』と」
「時間を盗む」とは穏やかではない。面食らった定岡さんが「じゃあ、なんで籍を入れてもいいなんて言ったの」と抗議すると、凛子さんは怒りを爆発させた。
「今まで散々我慢してきたんだから、予定くらい入れたっていいじゃない! 家でまで気を遣いたくない!」
何が何だかわからない。そもそも交際を持ちかけてきたのは凛子さんのほうだ。“我慢”させるほど拘束した覚えもない。そもそも交際中も月に1度か2度程度の頻度でしか会っていないのだ。
この結婚を続けるのは難しい。定岡さんがそう感じ始めた矢先、信じられない言葉が凛子さんの口から発された。
「
子供が欲しい」
◇後編「
「私をレイプするわけ!?」触られたくないけど子は欲しい妻が夫に隠した「真意」」に続く。
【ぼくたちの離婚 Vol.23 「結婚してる私」でありたい 前編】
<文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>