次の日の夜、いつものようにリビングで食後の団らんが始まり、咲奈さんはエアコンが少し効いていることを察し、部屋の片付けをすると言ってリビングから出ようとした時、義母が「咲奈ちゃん、フルーツ用意したから、少しだけ食べていかない?」と声を掛けられた咲奈さん。
「さっきより冷んやりしたリビングだったので、断ろうと思ったんですが、せっかく義母が用意してくれたので、少しだけみんなと時間を共にしてから自室に戻ろうとしたんです」
少し諦め顔の咲奈さんがソファに座りみんなと一緒にテレビを見ていると、突然義母が義父に向かって強い口調で話し始めたそうです。
「パパ、ちょっといい? 咲奈ちゃんはおめでたなの。あなたの孫ができたのよ。咲奈ちゃんの体のこと、お願いだから考えてあげて」
さっきまでテレビをみて大笑いしていた義父が、急にテレビの音量を下げて、咲奈さんのことを目を丸くしてじっと見つめていたそうです。
しばらくして義父はエアコンのリモコンに手をかけ「ピッ」という音をさせました。どうやらエアコンのスイッチを切ったそうです。
「咲奈ちゃん、ごめんね。赤ちゃんのために何でも協力するからね。私が馬鹿だった」
それ以降、義父は薄着をしたり工夫をしたりしながら咲奈さんに合わせた温度設定に協力してくれるようになったそうです。
「まあ、年齢のせいもあるかもですが、お義父さん、最近では以前よりも暑さを訴えなくなったんです。初孫のことが気になっているんですね、きっと」と、咲奈さんは嬉しそうに語ってくれました。
―シリーズ「秋のトホホ」―
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<文/浅川玲奈>
浅川玲奈
平安京で生まれ江戸で育ったアラサー文学少女、と自分で言ってしまう婚活マニア。最近の日課は近所の雑貨店で買ってきたサボテンの観察。シアワセになりたいがクチぐせ。