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演技派ジャニーズ生田斗真「鎌倉殿」で“うさんくさい貴族”として劇的な死に様

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK)第45回における、生田斗真演じる源仲章の死に様は劇的だった。義時(小栗旬)の役目だった太刀持ちの座を奪ったがために間違われて殺されてしまう。
(C)NHK

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義時と間違えられて斬られ、悲鳴を上げ、大騒ぎしたすえ、「寒い、寒いぞ 寒いぞ ああ 寒いんだよ~」という断末魔の声をあげながらとどめを刺される。 この寒い、寒いは、レジェンド刑事ドラマ『太陽にほえろ』のマカロニ刑事(萩原健一)が刺されて「あついなあ」と言いながら死んでいったようなこと? いや、単に雪が降り積もる鶴ケ岡八幡の石段が寒かっただけ? まあそれはさておき、「笑えるな おまえのかわりに死んでくれた」と義村(山本耕史)に言われ、なんともお気の毒な死であった。

育ちが良すぎて胡散臭い貴族を見事に作り上げていた

京都の貴族・仲章役のキャストが発表になったとき、かつて光源氏を演じたこともある生田斗真にピッタリと思ったものだったが、この仲章、とても胡散臭(うさんくさ)い人物であった。でもこの胡散臭さも見事であった。育ちが良すぎて胡散臭い、貴族という限られた世界に生きる者の退廃した雰囲気を見事に作り上げていた。 ちなみに、仲章が仕える後鳥羽上皇役で歌舞伎俳優の尾上松也とは高校の同級生で。松也の歌舞伎自主公演『挑む』に参加したこともある。ふたりしてどこか雅感のある朝廷グループとして、明確に鎌倉チームと差別化できていた。 京都と鎌倉をつなぐ使命を帯びた仲章は、義時の妻のえ(菊地凛子)に接近し、情報を得ようとする。
(C)NHK

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優雅な雰囲気でのえの心を捉えるときは胡散臭さ抑えめ。第43回で、のえの目にキラキラ光って見えたときの仲章はほんとうに光って見えた。もちろん照明がものすごく当たっているのだが、その照明を反射して増幅させるような内在するパワーはさすがジャニーズ育ちである。ちなみにここで、うぐいすのSEが入っている。 かつて、時政(坂東彌十郎)が義時にうぐいすのホーホケキョはメスを呼ぶときの声なのだと言っていたことを思い出して笑えた。

演技派ジャニーズとして評価

派手な照明とうぐいすのさえずりをまとって堂々と輝く生田斗真は84年、北海道生まれ。11歳からジャニーズに所属し、主に俳優として活動している。演技派ジャニーズのひとりである。 昨今は演技派ジャニーズも増えている印象だが、ジャニーズのなかでアイドルグループに属さず、ピンで俳優活動だけしている者は決して多くない。当初はいくつかのグループに所属していたこともあるが、ジャニーズアイドルとしてCDデビューすることなく、ピン俳優に落ち着いた、特異なタイプである。 アイドル活動をしていなかったからか(でもトーク番組などでバックダンサーとしての踊りをたまに披露するときはたちまちキラキラ溌剌オーラを出す)、2000年代まではヨーロッパの彫刻のように輪郭がくっきりして派手な顔立ちのわりに地味な役を任されている印象があった。 たとえば、義時役の小栗旬と共演した『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(07年 以下イケパラ)は主人公だし、“イケメンパラダイス”という身も蓋(ふた)もないサブタイトルがついているくらいだからイケメン役で、明るいムードメーカーという属性ではあるが、どこか利他的なムードがあって、ヒロイン(堀北真希)に一途な健気な少年の印象が強かった。 それが最大限に発揮されていた作品が、『ハチミツとクローバー』(08年)や『遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル~』(12年)であった。ヒロインを見つめるまなざしに情緒があって、主人公として攻めるよりも、相手の芝居を受けることを大事にすることで、物語の状況を的確に伝える役割を果たしていた。いま思うと、あくまでもアイドルではなく俳優の役割に徹する意識が強かったのかもしれない。等身大の役をやると見事に市井に存在する等身大の青年になってしまう。 映画では『人間失格』(10年)や前述の『源氏物語 千年の謎』(11年)や『脳男』(13年)と神がかった美をもった役を次々に担って評価も受けた。
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おバカな潜入捜査官役、女性役や難役も
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