「お正月の挨拶に行く日も、毎年決まっているわけじゃないんです。夫は、兄弟が多いんですが、実家がとにかく狭くて狭くて……。一度に親戚が集まれる広さがなかったので、私たち家族が実家に入っても、結構ぎゅうぎゅうなんです。
長方形の造りの家で、真ん中に大きいコタツがあったから、通路は一人ずつしか通れないくらい。なので、毎年お正月はそれぞれの家庭が行ける日に、バラバラと挨拶に行くような感じでしたね」
お正月はいつも、親戚が大勢で集まることはないようでした。でも……。
「あの年のお正月も、ちょっとだけ実家に立ち寄って挨拶しようと向かったんです。そしたら、たまたま義姉さんと義兄の車が駐車してあって」
義姉さんは4人家族、義兄さんは5人家族だそう。一度に実家には入れなさそうですが、どうしたのでしょうか。
「順番に挨拶しようと思っていたので、車から出て、外で待機していました」

実家へ入る順番を待っていた愛菜さん家族。しかし、しばらくすると……。
「わぁ、せっかくだからみんなで集合写真でも撮りましょうよ」という長男の嫁の声。そして、長男がお義父さんの車椅子を押しながら、こちらへ向かってきました。
義父は、前に会ったときより少し痩せていて、細い白髪の隙間から地肌がピカピカッと光っていたそう。
「正直、ものすごくめんどくさかったんですが、こればっかりは仕方ないと……。それで写真撮影のときに、一番小さい2歳の娘を、車椅子のおじいちゃんの膝の上に座らせてもらったんです。そしたら娘……おじいちゃんを指さして大きな声で『猿だ!猿だ!』って泣き出して……。もうあのときは本当に、頭が真っ白になりました。おじいちゃんは耳が遠いふりをしてくれたのですが、あの時は穴があったら入りたかったです」
義父はその数年後、他界したそう。今でもあのときの話は家族で話題になるそうです。
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<文/maki>