③JSA:南北分断映画の原点の一つにして“頂点”の一作
’99年、38度線上の南北共同警備区域(Joint Security Area)で起こった射殺事件。北は韓国軍の襲撃だと憤り、南は北の拉致からの脱出だと主張する。消えた一発の弾丸。食い違う当事者たちの供述。誰が誰を殺したのか。
最大の見せ場は、板門店で実施された韓国軍兵長のスヒョク(イ・ビョンホン)と、朝鮮人民軍中士ギョンピル(ソン・ガンホ)が同席した聴聞会だ。
お互い友情を秘めながらも、上官たちを前に憎み合わなくてはならない状況に耐え切れず、すべてを暴露しようとするスヒョクを殴り倒し、「朝鮮労働党万歳! 金正日将軍万歳!」と叫ぶギョンピルの鬼気迫る姿は、「事実を隠してこそ平和が保たれる」という物語の核心を突く名シーンだ。
マニア的視点で言えば、注目すべきは北側詰所に置かれたカセットデッキ。A面B面の音楽が自動で切り替わるオートリバース機能に、そこにいる人たちの意思にかかわらず平和と戦争を不意に行き来してしまう、南北分断の悲しいリアルが投影されている。
(発売元:ショウゲート 販売元:アミューズソフト DVD税抜価格:2980円 ©myungfilm2000)
④モガディシュ 脱出までの14日間:南北両大使館員が協力し、死地から脱出を試みる

DVD・Blu-ray発売中 発売元:カルチュア・パブリッシャーズ 販売元:ハピネット・メディアマーケテイング

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’90年、ソマリアの首都モガディシュ。国連正式加盟に向け南北双方が出し抜き合いの外交戦を繰り広げる中、激烈な内戦が勃発。大使館は襲撃され、通信やライフラインも遮断される。絶体絶命の危機に、いがみ合う南北両国の大使館員らが協力し合い脱出を図るが……。
実話をベースにした超政治的な物語を、アクションあり、カーチェイスあり、笑いと涙ありのエンターテインメントに仕上げてしまうのは韓国映画ならでは。
特に北朝鮮の大使館員らが韓国大使館に入った夜の食事のシーンは秀逸。毒が入っていないことを証明するため韓国大使がご飯を交換したり、重なって取りづらくなったエゴマの葉を北朝鮮の女性が箸で押さえて取りやすくしてあげたり、言葉を交わさずともそこに小さな絆が芽生え始める様子はセリフ以上に雄弁だ。
現実では溶け合うことのない南北の大使館員らが生命を懸けて助け合う姿が胸に迫るし、だからこそラストシーンがアツくもあり悲しくもある。