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離婚後子どもに会えない父親たち。その悲しみをマンガに描いた理由を作者に直撃

誰もが「悪い人」じゃないのに、みんなが苦しい

【続けて10話を読む】⇒『今朝もあの子の夢を見た』10話にジャンプ 「以前から、離婚後、養育費も支払っているのに子どもに会えない父親がいることは知っていたんです。そんな話をしてくれる人が身近にいたので、いろいろ聞いてみたら、会いに行ったら逮捕されてしまう、裁判をやっても会わせてもらえないなど、どうしてと思う内容で。  わからないから描いてみました。彼らに聞くと、子どもの夢を見て朝起きたら涙が出ているという経験をしているんですね。起きたら泣いていたって、とてもつらいんだろうなと」(野原広子さん。以下カギカッコ同じ)  そんな話を箇条書きにしていった。「別れた子どもと同年代の子を見ると泣きそうになる」「朝4時に目覚めると顔が涙で濡れている」「眠れない」。そうした「別れた子どもに会えない親たちの声」がプロットになっていった。 「最初は父親側と母親側の両方の視点を書くつもりでしたが、そうしてしまうと闘いの話になってしまうと思い、母親側の話は少しにして、娘の視点を入れました」
今朝もあの子の夢を見た

『今朝もあの子の夢を見た』(集英社)

 ギャンブルにはまって悲惨な離婚をした家庭でも、父親と子どもが会えている場合もある。それほど揉(も)めずに離婚しても、会えない家庭もある。いろいろ調べながら描いていった野原さんだが、話が進むにつれ葛藤(かっとう)が深くなっていったという。 「もちろんフィクションなんですが、一家庭のプライバシーに踏み込んでいるような気がして、描いている自分がつらくなって……。家族の形や関係には正解がないから、いろいろな方向から読んで、何かに気づいてもらえたらいいなと思っています」

何かを封印することってあると思う

 野原さん自身、子どもが成長してから離婚をしたが、それでも子どもが親の離婚を受け止めきれていないのではないかと感じることもあるという。ただ、離婚はしないが両親の不仲を見ながら育ったことで傷つく子どももいる。確かに何が正解かはわからない。子どもの特性もあるだろう。  作品の中の娘であるさくらは、親の離婚を自分の中で封印してしまった。 「何かを封印することってあると思うんです。私自身、両親が亡くなっているのですが、写真を飾っていないんです。あるときふと、私は親の死を認めたくなくて封印しているんだと気づきました」  それは自己防衛なのか、周りを傷つけまいとする配慮なのか。ただ、封印した事実には、本人がいつか気がつくかもしれない。さくらもきっといつか…となるのか気になるラストになっている。
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誰もが一生懸命生きている。けれども…
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