ここで、男性の体の反応、心の移り変わりについて説明します。男性の体において、勃起をする神経(スイッチ)と射精をする神経(スイッチ)というのは違うものなんです。勃起すればそのまま自然に射精へと至るわけではなく、勃起するときには副交感神経が優位で、射精の時には交感神経が優位にならなければいけない。つまり、勃起するときはリラックスしていなければいけなくて、射精の時は緊張集中状態でなければいけないんです。

ということは、頭だけすごく興奮して、体はリラックスしていないと勃起できない。さらに、頭の興奮だけで射精するというのはよっぽどの場合じゃないかぎりありえない。体への刺激が足されることで、射精に至ります。そして男性は射精した瞬間、頭の中の興奮と体の快感が瞬間的に下がっていきます。
相談者さんの質問に戻りますと、
「精液を飲んでほしい」という思いは、男性が興奮してから射精するまでの間は頭で思い続けていても、射精した瞬間に興奮が落ち着いていくので、徐々に「まあ、いいか」となっていくんです。射精後にもその思いを持ち続けている場合は、肉体的には射精していても脳内的には射精しておらず、飲ませる所までで完了します。こういった性癖の変態は間違っても「出していいよ」とは言いません。
一般的に、射精後の性的会話は、言葉通りにとってもらって大丈夫です。さらに言えば、射精前の言葉も本音であることが多いですが、射精後に180度変わってもどっちも本音です。

AVの場合は私的な一対一のセックスと違って、AVを見ている男性は男優の射精、自分の好きなシーン、もしくは女優のゴックンの瞬間に合わせて射精するので、時間差の射精が行われることが多々あります。実際のセックスではそんな時間差はありえないので、精子を飲んだ女の人がウェッて吐いてしまった場合、「いいよ、出しな、出しな」ってなるわけです。そこで
「絶対に飲め」という男性がいるとしたら、かなり認知が歪んでいると言えます。性的な意味あいの学習が間違ってしまったのです。これが極端な場合は犯罪者になってしまう恐れもあります。
実際の事件の話ですが、痴漢もののAVに影響を受けて、電車の中で女子高生の制服に精液をかけて何度も逮捕された男がいます。医師の治療を受けても抑えきれなくて、最後に捕まったときは、性器を出す行為は抑えられていたんですが、「かけたい」という欲望だけは抑えられず女子高生のスカートにマヨネーズをかけて、痴漢の罪ではなく器物破損の罪で捕まっています。
犯罪行為と、パートナー間でのやりとりにはもちろん大きな一線はありますが、精液を飲ます、かけるという行為に過剰に意味を見出すというのは、やはり共通して認知が歪んでいるのではないかと思います。自戒の意味も込めて、AVの影響は大いにあるでしょう。