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NHK『どうする家康』の杉野遥亮に注目。“勝手気まま”が許された才能が光る

『罠の戦争』から繋がる“ネギっ子遺伝子”

 康政と同じようなタイプのキャラクターを杉野はちょうど別のドラマでも演じている。もちろんまったく似ているというわけではないのだけれど、草彅剛主演『罠の戦争』(関西テレビ、フジテレビ系)で杉野が演じる蛯沢眞人は、康政と似た遺伝子を持ったキャラクターとして映る気がする。  それがどんな遺伝子かというと、雑草根性を持った“ネギっ子遺伝子”。陳情した兄が過労死したことから大臣(本田博太郎)を恨み、同じ気持ちを持つ鷲津亨(草彅剛)と復讐劇を繰り広げる眞人は、大学院で植物学を専攻し、とにかく植物に詳しい。  大臣に近付くため鷲津の下で秘書見習いになってからも、日常的に植物に関する雑学を要所要所で語り出す。確かな知識に裏打ちされたこのあたりの発言もどこか康政に近しい。  上司の虻川(田口浩正)によるパワハラが暴かれる第2話に大臣の地元で農作業を手伝う場面がある。スーツ姿で農作業に励む眞人が収穫するのがネギだった。ネギに関する雑学を所構わず披露するが、ネギを収穫するためには泥臭い仕事もいとわない。彼が作業する姿を見た農家の人も思わず微笑む。ここで確認すべきは、康政が生まれた三河国は現在の愛知県であること。愛知県の伝統野菜として有名なのが越津ネギである。  見た目はしゅっとしていながらも泥臭さを持つ眞人と康政をネギによって繋げてしまう杉野遥亮、彼はネギっ子俳優でもある。

大河俳優として

 勝手気ままな才能を持った俳優であり、ネギっ子俳優でもある杉野遥亮に筆者は心底惚れ込んでいる。一見頼りないかに見えて、いやいやどっこい、ここぞという場面であの厚い両の唇をきつく結んで凛々しく対象を見つめる眼差し。  通年でじっくり時間を掛けて歴史上の人物の生涯を描き出す大河ドラマだからこそ、主役の周りにいるサブキャラクターたちの存在が重要になる。2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、小栗旬演じる北条義時の幼なじみ役として山本耕史が最終話まで素晴らしい仕事をしていた。同じように今年は松本潤のかたわらに杉野遥亮が控える。  そりゃ、家康の古くからの腹心である石川数正を演じる松重豊に比べたら武将としての猛々(たけだけ)しさはないかもしれない。でも杉野遥亮には猛々しさの代わりに勝手気ままを許された自由さがあり、さらに役柄として三河国に生まれたひとりの武将としての静かなる闘志と根性が備わっている。  家康の行く末とともに注目されたし榊原康政の生涯。杉野遥亮は、松潤の脇でどんな大河俳優としての顔を全うしてくれるのか。筆者は楽しみでしょうがない。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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