――想像以上に厳しい世界だと感じたのですね。辞めたいと思うことはありましたか?
木下:辞めたいというか、逃げたいという気持ちはありました。モデル業の特殊な部分は、自分の見た目に対しての評価を受けなければならないことです。生まれもったものに対してもともと自信のある人だったら、評価を跳ね返す力があるかもしれないけど、当時の私はまだそこに到達できなくて。
変えなきゃいけないという焦りとすぐに変われないジレンマから、隠れたいという気持ちを抱くこともありました。
ー一キラキラして見えるモデルさんでも、自信をなくすことってあるんですね。
木下:今もファンの方からも自信がもてないとか、自己肯定感が低いという相談をいただくんですけど、100%自信をもって自己肯定感を高めるってすごく難しいことだと感じます。日本では自分が“オンリーワン”ではなく、ある程度みんなと同じであることがいいとされる傾向にあり。そういう教育を受けてきたので芸能界に入ると、自分というものをPRするときに苦手意識をもってしまうことは多いのかなと。
そういったなかで、たまたま仕事をいただいて、それをこなす。自分は自分のことを好きになれないのに、「いいね」と言ってくれる人がいて、また心の中に1つギャップが生まれてしまうんです。
――自分に自信がもてないとき、どのように意識を変えようとしたのでしょうか?
木下:あるファッションショーに出たとき、そこにいた何万人ものお客さんから声援をいただいたのですが、私が思う自分と、その大きな声援とのギャップを感じてしまいました。ランウェイを歩く他のモデルさんやポージングするモデルさんをみて、誰も“自信のない私”は求めていないと気づいたんです。
自信なさげにモジモジしていたらお客さんにも失礼なので、自信がなかったとしても表にいるときは、みんなが見たいと思ってくれている姿でいたいと感じました。
――“かわいい系モデル”としてのイメージを求められることも多かったと思いますが、それに対してはどう思っていましたか?
木下:これも前の質問につながると思っていて、モデルを始める前はトレンドの服が着られて、自分が好きな洋服を着て、かわいく撮ってもらえると、都合のいいことだけを考えていました。
初めは自分が着る系統ではない衣装だったので、当初は確かに葛藤がありました。でも、仕事への理解を深めていくうちに、モデルは本来、服の作り手や編集部の方たちの意向をキャッチアップしたうえで、最後のスパイスとして自分を使って表現する仕事だと考えるようになりました。