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松本穂香「これは映画?感動作なんですか?映画で終わらせてはいけない」|映画『トリとロキタ』

 数々の映画やドラマに出演している、若手注目株の女優・松本穂香さん。大の映画好きでもあるという松本さんが、話題作『トリとロキタ』について語ります。
銀幕ロンリーガール/松本穂香

松本穂香さん

込み上げる悲しさと虚しさ。映画で終わらせてはいけない

 今回、私が紹介する作品は、『トリとロキタ』です。トリとロキタの2人は、アフリカからベルギーにやってきた移民の子どもたち。ロキタの夢は家政婦として働き、トリと一緒に暮らすこと。そのために偽造ビザを手に入れたくて、2人は懸命に働く。  子どもの世界は狭い。目の前にあることにとにかく必死で、自分が無理をしていることにも気づかない。キャパシティをはるかに超えてしまっても頑張るしかない。そうしないと、生きていけないから。
銀幕ロンリーガール/松本穂香

『トリとロキタ』より Photos ©Christine Plenus

 どこまでも2人きりのトリとロキタ。そこに立ち入ることのできない、自分の非力さが悲しかった。「大丈夫だよ」と守ってあげる存在がそばにいてあげるべきだけど、それが叶わない。そしてそういう世界は想像もつかないほど、この世に存在している。

これは、映画なんですか? 感動作なんですか?

 こうやって私一人が嘆いたところで、この言葉はその子たちには届かないし、抱きしめることもできない。だけど、こうして映画にして世界に発信することで、何かのきっかけになるのかもしれないと、改めて感じました。そしてまた、映画で終わらせてはいけないとも。評論する言葉のなかには、「傑作」や「感動作」といった言葉が並んでいました。なぜかはわからないけれど、それが悲しかった。  決して人の感想を否定したいわけじゃないんです。どんな感想を持とうとそれは自由だし、間違いなんてないから。だけどこれは、映画なんですか? 感動作なんですか? ものすごく生意気なことを言っているのかもしれないけど、紛れもないこの悲しさと虚しさを見過ごせなかった。ここまで自分勝手に感想をつらつらと書いてしまったけれど、これ以上踏み込んで話をするには、私はまだまだ無知すぎる。でも、わかろうとすることが重要なんだと思います。  私はとても無力だけれど、彼らに対して何ができるんだろう。  映画という枠を超えて問いかけてくる、そんな作品でした。 ●『トリとロキタ 配給:ビターズ・エンド 移民のトリとロキタが、偽りの姉弟となって過酷な社会を生き抜こうとする人間ドラマ。©LES FILMS DU FLEUVE-ARCHIPEL 35-SAVAGE FILM-FRANCE 2 CINEMA-VOO et Be tv-PROXIMUS-RTBF(Television belge)Photos ©Christine Plenus 【他の記事を読む】⇒「松本穂香の銀幕ロンリーガール」の一覧はこちら <文/松本穂香> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
松本穂香
1997年2月5日生まれ。大阪府出身。2015年『風に立つライオン』で長編映画デビュー。2017年連続テレビ小説『ひよっこ』に出演して注目を集め、2018年にはTBS日曜劇場『この世界の片隅に』で主演に抜擢。2023年、映画『“それ”がいる森』で日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。2024年10月期月9ドラマ『嘘解きレトリック』では鈴鹿央士とともにW主演を務めた
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