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「店奥の生理用品の棚に追いやられて…」デリケートゾーン用商品を開発する女性社長を取材

 最近、「フェムケア」という言葉を耳にするようになりました。生理やデリケートゾーンの悩みは、なんとなく「恥ずかしい」「話しにくい」と思われがちですが、多くの女性が抱えている悩みでもあります。  2021年の新語・流行語大賞には「フェムテック」という言葉がノミネートされ、大手ブランドであるユニクロやワコールが積極的にフェムケア商品を販売するなど、ここ数年で女性の悩みにアプローチする動きが広がってきています。
株式会社lojus(ロフス)の代表・田中麻里奈さん

株式会社lojus(ロフス)の代表・田中麻里奈さん

 株式会社lojus(ロフス)の代表である田中麻里奈さんは、女性の悩みに寄り添うためのボディケアブランド『MAPUTI』をプロデュース。デリケートゾーンケアアイテムは、日本最大級のコスメ・美容系サービスアプリ「LIPS」でベストコスメ入りするまでに注目されています。  しかし、フェムケアアイテムを世に広めるまでに苦労したそうです。田中さんに、フェムケア市場を開拓するまでの道のりや、女性の身体の悩みに対する考え方の変化などについて話を聞きました。

「デリケートゾーンケア」への意識が今より低かった

――デリケートゾーンケアアイテムを販売しようと決めたきっかけは何ですか? 田中:私は2歳から6歳まで中国、小学3年から中学2年までシンガポール、中学卒業までマレーシアに在住し、高校から日本で過ごしていました。社会人になり美容系の仕事をするなかで、自分で美容品メーカーを始めたいと思うようになりました。 2015年当時、VIO脱毛をしていたことで、デリケートゾーンの黒ずみや乾燥を気にしていました。デリケートゾーンケアアイテムの必要性を感じましたが、日本で探すことは難しかったんです。そこで、自分でデリケートゾーンケアアイテムを開発しようと決めました。 ――デリケートゾーンアイテムが珍しい状況で、商品を開発することはチャレンジングなことだったのでは? 田中:2015年当時、デリケートゾーンケアアイテムはほぼ店頭に並んでいない状況でネットで調べていると、表参道ヒルズにあるエステサロンで販売されていた、アンティームホワイトクリームという商品を見つけました。 価格は約3000円と少し高額でしたが、調べた限りではそれ以上安いデリケートゾーンケアアイテムがありませんでした。しかし、Amazonで週に約2000個も売れていたんです。当時見つけたアンティームホワイトクリームはイタリア製だったので、日本製で安全かつ手頃な商品を開発すれば、需要はあるのではないかと考えました。 ――日本では、海外に比べてデリケートゾーンをケアしようという意識が低いように感じます。 田中:主に美容に関心のある人や脱毛やサロンに通う人が、デリケートゾーンケアアイテムを購入していましたが、そのほかの人たちは、「ケア」という概念自体がなかったと思います。 実際、2016年からは、アメリカ発の「サマーズイブ」やフィリピン発の「PH care」など、デリケートゾーンに特化したアイテムがドラッグストアで見かけるようになりましたが、店頭の奥にある生理用品コーナーに置かれていたこともあり、認知度はまだまだ低かったです。

日本では思うより広がらず、市場を中国へ

MAPUTI「オーガニックフレグランスホワイトクリーム」(100ml)/2200円(税込)

MAPUTI「オーガニックフレグランスホワイトクリーム」(100ml)/2200円(税込)

――田中さんが販売しているデリケートゾーンケアアイテム「オーガニックフレグランスホワイトクリーム」と「オーガニックフレグランスインティメイトソープ」が、2022年にLIPSベストコスメ1位、2位を獲得しました。販売当初からベストコスメを獲得するまでの6年間、どのような試行錯誤をされましたか? 田中:2016年に販売を始め、大手化粧品問屋に商品について話しを持ちかけたところ、「世にはないものだから提案を受けられるかわからない」と言われることが多かったです。珍しいからという理由で試しに受け入れてくれる会社もあったのですが、なかなか売れず……。 一方で、当時「爆買い」という言葉がよく使われ、銀座や新宿では日本の商品を買う中国人観光客を多く見かけたんですね。そこで中国市場に可能性を感じ、2018年から中国での販売にシフトチェンジすることにしました。結果、中国ではホワイトクリームは年間100万個を販売することができ、安定した立ち位置を得ることができました。
MAPUTI「オーガニックフレグランスインティメイトソープ」(120ml)/2420円(税込)

MAPUTI「オーガニックフレグランスインティメイトソープ」(120ml)/2420円(税込)

――先に中国で販売し、そこから日本へ進出したという流れですか? 田中:そうですね。ただ、国内で営業を始めてすぐ、2019年にコロナが流行し外国人観光客が減ったことから、商品を置くことができなくなってしまいました。ですが、ちょうどそのとき、雑誌で「フェムケア」という言葉が使われるようになり、SNSではTikTokが流行り出したんですね。 この流れに便乗し、私たちもデリケートゾーンケアアイテムを広めようと、インフルエンサーの方に依頼してTikTokで発信してもらったり、ハッシュタグをつけて投稿する「ハッシュタグチャレンジ」をしたりしました。その結果、現在国内では約4500店舗で商品を取り扱っていただいています。
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フェムケアの話は“タブー視”されていた
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