
『トランスジェンダー問題――議論は正義のために』(ショーン・フェイ 著、高井ゆと里 訳、清水晶子 解説/明石書店刊)
――SNS上での議論が炎上しやすいのはなぜでしょうか?
高井:今このインタビューを受けている空間は、わたしを含めて部屋には数人しかおらず、閉じた場所で話ができていますが、たとえばTwitterのような場所では、顔も名前も何をしているかも知らない相手とたった140文字で会話しなければなりません。
短文で文字が飛び交う場所だと、話す内容自体が限られてしまうことがあり、いかに注目を集める言葉を使うかで拡散力が変わってしまいます。注目を集める発言にするには、短く断定するような表現も多くなるので、問題の複雑さは無視することになります。
――注目を集める発言とは、具体的にどのようなことですか?
高井:多くの場合、発信をバズらせるためにトランスジェンダーに関する偏見が利用されています。たとえば、「大柄でヒゲの生えた男性が自分を女性だと言い、女性トイレに入ってきてプライベートゾーンを見せたらどうするのか?」のように、当事者に向けられる偏見が言葉によって刺激されてしまうのです。
そういった場所で、トランスジェンダーが自分たちの話をするのは難しいですし、発言してもバッシングを受けることが多くあります。
――対立ではなく対話するために、人々がもつべき姿勢はありますか?
高井:トランスジェンダーについて発信する人も増えてきましたが、同時にトランスジェンダーの状況を無視するような言葉が急激に増えているように感じます。現状、トランスジェンダーであることをオープンにできる人は少なく、当事者には発言権がありません。
SNS上では自分たちの思い込みを使って議論しようとする人が多く、不安になるかもしれません。しかし、もしトランスジェンダーの状況を考えてみようと思っている人がいれば、当事者の話を聞いてほしいですし、話をさせてほしいと思います。そして、時間をください。トランスジェンダーについての適切な情報が日本社会で流通するためには、まだまだ時間が必要だからです。
<取材・文/Honoka Yamasaki 撮影/星亘>
山﨑穂花
レズビアン当事者の視点からライターとしてジェンダーやLGBTQ+に関する発信をする傍ら、レズビアンGOGOダンサーとして活動。自身の連載には、レズビアン関連書籍を紹介するnewTOKYOの「私とアナタのための、エンパワ本」、過去の連載にはタイムアウト東京「SEX:私の場合」、manmam「二丁目の性態図鑑」、IRIS「トランスジェンダーとして生きてきた軌跡」がある。また、レズビアンをはじめとしたセクマイ女性に向けた共感型SNS「PIAMY」の広報に携わり、レズビアンコミュニティーに向けた活動を行っている。
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