
青山新「女のはじまり/どうにもならない恋だもの」(テイチクエンタテインメント)
ところで、今、演歌界には、お笑いの世界のように「第7世代」がある。戦後の三橋美智也などの大御所から数えてのくくりらしい。代表的な歌手としては、バラエティ番組でも引っ張りだこの新浜レオン(26)や水森英夫門下の青山新(22)など、ニュースターが続々演歌界でデビューしている。
演歌第7世代では青山が一番年下だが、彼よりさらに2歳も若い原田をこの世代に入れるべきかどうか。西城秀樹を敬愛する新浜は、伸びやかな高音が特徴だし、青山にしても伝統的な演歌仕込みの安定感がある。
あるいは、吉幾三の秘蔵っ子である真田ナオキ(33)の「渋谷で・・・どう?」(2022年リリース)を聴いてもかすれ声の伝統を感じる。彼らに比べると、原田は演歌よりはムード歌謡的だし、ポップス寄り志向が明らかに強い。

「純情ホトトギス」(日本クラウン)
それもそのはず。ニューシングル「純情ホトトギス」の仕掛け人(作詩・作曲)は、つんく♂。幼い頃から、祖父の影響で演歌に親しんでいたとは言え、原田は、SNSネイティブ世代。同曲のTikTok投稿では、遊び心あふれる振り(ローアングル気味の表情がとにかく色っぽい)で、若いジェネレーションにも演歌の魅力を伝えている。
「偽りのくちびる~最後の恋~」のカップリング曲として「シャ乱Q」の代表曲「シングルベッド」(1994年リリース)をカバーしたのも心憎い。やはり低音の耳障りがよく、フレージングが絶妙。カバーだからこそ、歌詞を読み込む感性も鋭い。
他のカバー曲でも「やっぱ好きやねん」(2022年リリース、1stアルバム『Good Time Music ~POPO WAVES バンド~』収録)なんて、クセ強の天才(怪人?)やしきたかじんの名曲に対するリスペクトと往年の歌謡曲の歌心をちゃんとつかんでいる。
ロック歌手が演歌歌手として成功する映画『シャ乱Qの演歌の花道』(1997年)に主演したつんく♂ならではの演歌への理解は深い。つんく♂によるプロデュースは、ド演歌ではなく、あえてポップさへ振り、演歌ならざる演歌を新しく生み出す。スター氷川きよしにも憧れる原田は、演歌界への超変化球として、“スーパー演歌の花道”を着実に歩むのだろう。
<文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:
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