妻は強い人でした。特に『末期ガンでも元気です』(以下、『元気です』)に関しては、「私が描かずに誰が描く」という使命感は持っていたのではないでしょうか。主治医さんには、自ら作家であることを明かし、今日のことを描きたい、この部屋のことを参考にしたい、とお願いすることがしばしばありました。通院しつつ取材しているかのような……。『元気です』のなかで、大腸内視鏡に臨む際、ひるなまがメガネをかけるシーンがあります。
いつか描くかもしれない闘病記のため、病状はともかく「見られるところは見ておこう」と考えたそうです。

ひるなま『末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる (POLARIS COMICS)』フレックスコミックス(株)
またあるときは、ずっと描いていて、あまりに部屋から出てこないんです。さすがに体に無理をかけすぎでは?と「頑張りすぎじゃない?」と声をかけました。すると、「頑張らないのは、無理よ」と返ってきました。なんとも頑固です(笑)。この後「根を詰め過ぎないでね」と言い換えると納得しました。言葉へのこだわりも、常々相当な強さを感じていました。
私が
ブログを開設した一番の理由は、読者やフォロワーへの恩返しです。昨年12月、ひるなま闘病アカウントにて、妻の旅立ちをご報告しました。そのことをきっかけに、妻の読者、フォロワーの皆さんとの交流が生まれました。みなさん、温かいんです。優しいんです。
『元気です』で描かれた“夫”の姿があまりにも頼りなく、めちゃくちゃ心配だったのだと思いますが(苦笑)。
ひるなまを愛してくださった方々が、とにかく私のことを気にかけてくださいました。また妻のアカウントには、がんや重病、難病に罹患した方もいらっしゃいます。ご自身のことで大変でしょうに、妻を悼み、私を心配し、励まし、妻や私のことを思うと涙が止まらないと、言ってくれました。
私は読者やフォロワーの方々のことを「妻の生きがい」だと思っています。だから、「恩返し」がしたいのです。