妻が、抗がん剤の化学療法を継続しながら『元気です』を描き上げたのは、並大抵のことではありません。そんな中でも、病気に悩み、苦しみ、心身傷付いた方たちのことを妻は自分ごととして捉え、慰めや、励ましや勇気、経験談を届けたくて描いていたはずです。
そして妻が、闘病中の大部分の期間を、笑顔の中で私と暮らせたのは、『元気です』という作品を描きあげた達成感や自己肯定感、届けたいことをたくさんの方に届けることができた充実感を通して、生きる実感を得ていきいきと過ごすことができたからです。これは断言できます。
妻が旅立ってから、「妻の生きがい」であった皆様に対し、私から何か返せるものはないのだろうか。そんな思いが日増しに大きくなっていきました。また、妻は、次回作についても構想を練(ね)っていました。妻も、まだ伝え足りないことがあったのです。『元気です』完結後の生活についても、同様です。実際に話してくれましたし、メモにも残っています。

(画像:『末期ガンでも元気です』ひるなまの夫オフィシャルブログ より)
私は妻とは異なる視点で闘病を見つめてきました。『元気です』を読むことで、「ひるなまは、こんなこと考えていたのか」と唸る一方で、「私の視点はあくまで私の視点である」ことに気づきました。
「がん」という病に対して、私たち夫婦は2人で立ち向かってきたつもりです。しかし、同じ部分を見ていた部分と、それぞれ異なる角度から闘病に向き合っていた部分も確かにあった。ならば、私の目線から『末期ガンでも元気です』を補完する形で、「闘病記」をお届けできればと。
「超絶ポジティブ」漫画は描けませんが、こぼれ話のようなものでよければ、「恩返し」として発信する価値はあるのかもしれない。ということで、「恩返し」として、「私から見た、経験した『ひるなまの闘病記』」を発信しようと至りました。