夫にナツミの話をしたら、漫画みたいにワインを吹いた
戦闘意欲がわいてきたのか、大事なものを守るために彼女を排除しようと思ったのか。そのどちらもだとリカコさんは言う。そして夫に制裁を加えてやりたいとも思った。

「でもまずは夫に確認しないとフェアじゃない。まあ、もともとフェアじゃないのは夫のほうですが。だから娘が寝静まったころに、『ちょっと飲む?』とワインを開けたんです。そして『
ナツミっていうのが今日、会社に来たけど』と言ったら、夫がワインを吹きだした。ホント、漫画みたいに吹いたんです。あんなにあわてた夫を見たのは初めてだった」
自分が泣き出すのではないかと思っていたリカコさんだが、夫の慌てた姿を見て妙に冷静になっていった。
「下品じゃないよ。彼女はまっすぐでいい子なんだよ」
「あんな下品な女とつきあわないでよと思わず言ってしまいました。すると夫は『下品じゃないよ。彼女はああ見えてまっすぐでいい子なんだよ』って。あんた、妻に向かって何を言い出すのと思いました。
私も見くびられたものねと言うと、『いや、きみが彼女を下に見ているから』って。
夫の愛人が妻に会いに来たのよ、私の気持ちが想像できないのと強い口調で責めました。あまりの言い草に呆れたので」

だが夫はナツミさんとの男女関係を否定した。彼女がかわいそうな子なんだ、冷たくはできないと夫は言い張った。そう言いながら、どこで知り合ったのかも明かさない。リカコさんは「もういい」と席を立った。