一方の楓は、結婚記念日でのことを悪いとは思っている。いつもはせっせと世話を焼いてくれる夫がうっとうしいとも感じていた。自分が責められている気持ちになるからだ。ところがみちと激しいキスを交わして帰宅した誠は、楓からの「埋め合わせデート」の誘いを断る。さらに「先に寝るね」とあっさり言われて気が抜けたような顔になる。
セックスを拒絶してきた当人に限って、相手の心が離れそうになると「何かが違う」と感じるのかもしれない。

第4話より
「したくない側」の心理が事細かに語られているのがおもしろい。客観的にみると、拒絶する理由は「たいしたことではない」ようにも思えるが、楓にとっては「
疲れるだけ。今は仕事で重要な時期。疲れるセックスはしたくない。もし妊娠したらキャリアに差し支える」のは大事なことなのだ。
陽一にとってのみちは、「母的な存在」なのだろう。自分にはきれいにできたオムライスを出し、焦げたのを食べている妻を、彼は当たり前に眺めている。彼が意識しているかどうかは別として、妻の犠牲は、彼にとってはそのまま「子に尽くす母の犠牲」に取って代わったものになっているのだ。だから妻とはできない。
夫婦がそれぞれ不倫をしたら、夫婦関係はどうなっていくのだろうか。
結婚して15年たったころ、夫以外に好きな人ができてしまったと言うノリコさん(仮名・45歳)。同い年の夫とは共働きで、ひとり息子を育ててきた。子どもが生まれてからは近所に住む夫の母が最大限に協力してくれた。
「2年前、元カレに再会したんです。結婚するつもりだったのに彼の親に大反対されてあきらめた人。当時のことを謝る彼にほだされてしまって……。やっぱり好きだったから。
夫のことも嫌いではなかったけど、息子が生まれてからほとんどレスだった。この8年は一度もしていません。もう一生、夫は私を女とは見ない、ただの同居人なんだろうなと思っていました。それはそれで割り切っていたんですけど、元カレに会って恋愛感情が炸裂してしまったんです」

写真はイメージです(以下同じ)
コロナ禍ではあったが、人目を忍んで会った。元カレもまた「
うちもレスだよ。妻からは外でしてきてと言われた」と涙目になっていた。お互いの気持ちがわかるから、そして以前の恋愛感情が戻ってきてしまったから、そう簡単には離れられなくなった。
「元カレも私も、家庭を壊すつもりはないんです。でもこの関係は続けていきたい。そう思っていました。元カレも、もう二度と別れたくないと言ってくれた。
でもそれは家族としてではなく、恋愛相手としてなんです」
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