「副校長先生によると、ここ数年、PTAの活動内容をかなり減らしているというのです。以前は当たり前だったベルマークの集計作業や茶話(さわ)会を廃止し、定期的に行われていた部会も可能な限りなくしたり、オンラインミーティングに切り替えたりしているとか。
最近は、忙しいお母さんたちが増えているので、
なるべく負担がかからないような活動内容に変えているのだと話されていました」

共働きの家庭が増えているにもかかわらず、学校やPTAは相変わらず、世の母親たちに負担を強いている。そう思っていた亜美さんにとっては、ちょっとした驚きでした。
「副校長先生なりに苦慮しているんだなと感じましたね。最初は、抗議しようと考えていたんです。『保護者が忙しい毎日のなか四苦八苦していること、巷(ちまた)でPTAに対する反感が高まっていることを知ってください!』ってね。でも、
私が言うまでもなくちゃんと理解されているみたいでした」
電話を切る前には、副校長から「お母さんのような責任感のある方ならきっと大丈夫」と謎の激励を受けたという亜美さん。なんだかモヤモヤが残ったそうですが、夫と話し合い、最終的にはPTA委員をやることにしたそうです。
4月からPTAの活動を開始したという亜美さん。実際にやってみてどう感じたのでしょうか?
「まだ始まったばかりなので、詳しい事はわかりませんが、
デメリットばかりではないと思います。普段あまり会わない保護者や教職員の方々と話す機会ができるし、それによって学校生活や習い事、中学受験や地域のことなど、色々と情報交換できますから」
その一方で、「やっぱり!」と思ったこともあったとか。
「部会に出てみたら、空席がけっこうあって。単に欠席した人もいたようですが、
どうやらPTA委員の就任を拒否した保護者もいたようです。また、名目上は役員や委員になっているけど、活動は一切しないという人も少なくないみたいです」
なるほど。だから、副校長先生は「活動は難しい」と連絡してきた亜美さんをむしろ「責任感が強い」と感じたわけですね。
「そうみたいです。けど、PTAの役員や委員を拒否する人、選ばれても活動はしないという人の気持ちもよ~くわかります。くじ引きで当たった人は『やって当然』で、選択肢がないなんて、どう考えても変な話ですから。よくわからないうちに、こちら側の意思や論理や一般常識が全く通用しない世界にグイグイ引き込まれるんです。
もう怒りや驚きを通り越して恐怖ですよ。なんだかホラー映画でも見ているような感じでした」