がんは日本人の2人に1人がかかります、と言われて「ふーん、そうなんだ」となんとなく思ってはいても、まさか自分がその1人になるとは皆さんも想像していないのではないでしょうか。
私もまさに「対岸の火事」と思っていました。それが「自分ごと」としていきなり目前に迫ってきたのです。
「初発の乳がんは、とにかくちゃんと治療をすれば必ず治りますから、必ず治療を受けてくださいね」と先生はわたしの目をまっすぐに見て、熱のこもった表情で必死に語りかけてきました。
そして、その日はクリスマスイブ。はっきりした細胞診の結果は年明けになります。
「細胞診の結果はまず間違いなく悪性だろうから、できるだけ早い治療を開始したほうがいい」とのことで、年末年始の間に治療ができる病院を探しておくよう言われました。
とはいっても、知り合いでがんの治療をした人もおらず、病院のあてがない状態。困っていると先生は、
「乳がんは治療の仕方は確立されています。それを『標準治療』と言います。乳がんの治療ができる病院ならそれを受けることができます。
なのでまずは、「手術・抗がん剤・放射線治療」ができる設備が整っている病院を探してみてください」と説明をしてくれました(それでも手掛かりがなさすぎて、年末年始は病院調べに明け暮れることになるのですが……)。

先生は続けて言いました。
「詳しくは細胞診の結果にもよりますが、あなたのガンのタイプを予想するに、おそらく手術と抗がん剤、あと放射線の治療をすることになると思います。おおよそ1年間の治療になりますが、ちゃんとやれば治りますから大丈夫です。少し頑張って治しましょう」
先生があまりに「ちゃんと治療しましょう」と熱弁をふるうので、悪性ならば当然早く切って取ってしまいたいと思っていたわたしは、ふとその発言を不思議に感じました。
「乳がんと言われてショックですが、怖いし、もちろん手術をはじめ治療はするつもりです。逆にちゃんと治療しない人っているんですか?」
そう聞いてみると先生はとても困ったような顔をして「残念ながら、乳がんを宣告されたあと、治療をしなくなっちゃう人がいるんですよ」と言います。
聞けば「自分が乳がんである」という現実を直視できず、「がん」という得体のしれない言葉に怯えてしまって、治療に向かえない人や、何か別の代替療法を求めて、病院に来なくなってしまう人が少なからずいるのだとか。
「だけど、本当にきちんと手術して必要な治療を受ければ、また日常生活に戻れるんです。1年は長く感じるかもしれませんが、1年だけ頑張って治療してくださいね」と再度強調して言われました。