妻はシてくれず、浮気相手にもことごとくフラれる男を演じきった俳優を讃えたい|ドラマ『あなたがしてくれなくても』
岩田剛典が新名誠役をまっとうしてくれた。『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系、毎週木曜日よる10時放送)最終話、翌週の特別編放送を終え、感極まっている。
全話を通じて、実にさまざまな表情を視聴者に垣間見せ、提示した。岩田にとってこの役柄がどれだけ重要な意味を持つことか。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、岩田剛典の名演の数々を振り返りながら、俳優人生の足跡を辿る。
『あなたがしてくれなくても』は、とにかく名場面の嵐のようなドラマ作品だった。ほとんどの場面で岩田剛典がこれでもかというくらい、とびきりの名演を繰り出した。岩田が演じた新名誠は、ドラマ世界最大の功労者でもある。
全11話、前半部では毎晩、妻・新名楓(田中みな実)のために手料理を作った。献身的な夫の顔からにじんでくる切実な思いが、この新名クッキングには込められていた。
彼の切実な気持ちが思わずだだ漏れしてしまうのは、同じ営業部で働いた吉野みち(奈緒)を前にしたときが多い。
みちから唐突に夫・吉野陽一(永山瑛太)とのセックスレスを告白されたり、事実上の不倫関係になったにもかかわらず、ことごとく振られてしまう瞬間の表情など、細部の決定的な場面で新名の瞳が不思議と潤んだ。
この潤みに繊細なバリエーションをつけながら演じた岩田は、“魂の潤み典”ともいうべき熱演で毎週視聴者の心をしめつけた。
極めつけは、必要最低限を特徴とする視線の動かし方だ。例えば、楓との関係性がいよいよ瓦解寸前の第5話でのひと幕。彼女に本心をぶつけようとした新名だったが、楓のスマホに着信があり会話が中断される。
音が鳴るほうへ視線を滑らせ、鳴り止むとすみやかに戻す。簡単な演技に見えてしまうが、変に感情をこめたり、何の着色もなく単純に視線を動かすことは思いの外難しい。
筆者はこの場面での岩田について、以前書いたコラムの中で、『サイコ』(1960年)などの巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督も必ずや絶賛するのでは? と指摘した。
それくらい俳優の技量が試される場面で、ポンと名演を出せてしまう岩田剛典は、やっぱりただ者じゃないと再確認させられた瞬間だった。
新名誠役による名場面の数々
『あなたがしてくれなくても』は、とにかく名場面の嵐のようなドラマ作品だった。ほとんどの場面で岩田剛典がこれでもかというくらい、とびきりの名演を繰り出した。岩田が演じた新名誠は、ドラマ世界最大の功労者でもある。
全11話、前半部では毎晩、妻・新名楓(田中みな実)のために手料理を作った。献身的な夫の顔からにじんでくる切実な思いが、この新名クッキングには込められていた。
彼の切実な気持ちが思わずだだ漏れしてしまうのは、同じ営業部で働いた吉野みち(奈緒)を前にしたときが多い。
みちから唐突に夫・吉野陽一(永山瑛太)とのセックスレスを告白されたり、事実上の不倫関係になったにもかかわらず、ことごとく振られてしまう瞬間の表情など、細部の決定的な場面で新名の瞳が不思議と潤んだ。
この潤みに繊細なバリエーションをつけながら演じた岩田は、“魂の潤み典”ともいうべき熱演で毎週視聴者の心をしめつけた。
ポンと名演を出せてしまう岩田剛典
極めつけは、必要最低限を特徴とする視線の動かし方だ。例えば、楓との関係性がいよいよ瓦解寸前の第5話でのひと幕。彼女に本心をぶつけようとした新名だったが、楓のスマホに着信があり会話が中断される。
音が鳴るほうへ視線を滑らせ、鳴り止むとすみやかに戻す。簡単な演技に見えてしまうが、変に感情をこめたり、何の着色もなく単純に視線を動かすことは思いの外難しい。
筆者はこの場面での岩田について、以前書いたコラムの中で、『サイコ』(1960年)などの巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督も必ずや絶賛するのでは? と指摘した。
それくらい俳優の技量が試される場面で、ポンと名演を出せてしまう岩田剛典は、やっぱりただ者じゃないと再確認させられた瞬間だった。
この連載の前回記事



