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ママ友づきあいに悩んで酒に依存する女性も…「男尊女卑の日本社会」が根本原因といえるワケ

 6月21日、各国の男女格差の現状を評価する「世界男女格差報告書」2023年版が発表されました。17回目の実施となる今回、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位で、過去最低を記録。大きな課題が改めて浮き彫りになる結果でした。
男女格差

※イメージです(以下、同じ)

 この状況がタイトルにも表れる新刊『男尊女卑依存症社会』(亜紀書房)が、先ほどの報告書が発表された同日から発売されています。本書は、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏が、依存症問題の一因として「男尊女卑」の価値観に着目したもの。  男性優位の社会はなぜ人々を依存症に陥れるのか、斉藤氏に聞きました。

「依存症は強い意志でやめられる」は誤った固定観念

 まず依存症の要因とはどんなものでしょうか。 「お酒がないと生きていけないのは、だらしないから」「強い意志を持てさえすれば、薬物はやめられる」など、依存を個人的な資質の問題とする考え方は、日本社会に強く根付いています。  しかし斉藤氏は「どのような人も、何かしらの依存症になる可能性を持っている」と話します。 「例えば、覚醒剤を使用して“こんなもんか”で終わる人もいれば、一回目の経験のときに強烈な快感を覚える人もいます。この差は、その人が置かれた環境やそれによる精神状態(心理学的要因)の違いによってもたらされます。  人生で何らかの苦難を強いられていて、自己否定的な感情に囚われている人ほど、脳の報酬系の回路に与える薬物のインパクトが大きい。こうしたことから、依存の要因を個人の考え方や性格の問題に矮小化(わいしょうか)せず、その人の背景にある「痛み」を理解したうえで捉え直すことが重要であると言えます」(以下、斉藤氏)

依存症と「男尊女卑」の関係性

子供 アルコール、ギャンブル、痴漢、万引き、盗撮など、多様な種類がある依存症。対象はそれぞれ違うものの、その原理原則には共通点が見いだせるのだそう。 「依存症は、不適切な養育環境で育ったことや、虐待、親との早期の離別・死別、学生時代の過酷ないじめ被害など、複合的な逆境体験が重なっている場合がほとんどです。この逆境体験から派生する『生きづらさ』を一時的に解消させるためのツールとして、人はアルコールや薬物などを使用します。  すると一時的にネガティブな感情を忘れることができますが、現実に変化がない限り『生きづらさ』からは逃れられない。さらに、脳内報酬系に条件反射の回路ができあがるのも相まって、人は特定の対象物や行為を手放せなくなるのです」  依存症の発端となる「生きづらさ」。それは、私たちの生きる社会の構造によってこそ引き起こされるものではないか──こうした発想から、斉藤氏は「男尊女卑社会」と「依存症」の関係性に目を向けました。 「男らしさ・女らしさといったジェンダー規範を押し付けられることによってそこに過剰適応せざるを得なかった『生きづらさ』を抱えている人は、非常に多いように思います。  例えば子どもが何らかの問題行動を起こしたとき、父親が母親を一方的に責めるケースはよく見受けられるのですが、この背景にあるのは“男は仕事・女は家庭”といった性別役割分業が押し付けられている状況にあると考えています。日本社会ではいまだ、女性が育児や介護などのケア労働に関わる時間が男性と比べて圧倒的に多いため、子どもが問題を起こしたときにも、社会からの目線が母親に向けられてしまうのです」
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子育ての自己責任論から解放されることが重要
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