
さらに根源をたどっていくと、育児に参加しない/できない父親の問題や、夫婦関係の問題が浮かび上がってくるそう。
「男性は働くことこそが社会的役割であり、外で働きさえすれば家庭のことは免責されるといった家父長制的な価値観のもと、父親は仕事を免罪符にして育児から遠ざかる。
こうした構造から、子どもに関わることはすべて母親の責任であるとしがちですし、母親側もそうした価値観を内面化してしまうことが多いのです。母親からの相談を受けていてよく聞かれるのは『私の育て方が悪かったのではないか?』という声なのですが、むしろ家族の回復はこういった子育ての自己責任論から解放されることこそ、重要な課題と言えるでしょう。
私自身、問題を起こした子どもの両親から相談を受ける機会が多いのですが、話を聞くうちに夫婦関係の根っこにある問題が浮かび上がってくるケースがほとんどです。従って、子どもの問題をきっかけに、家族間の関係性が再構築されるような場合も多いです」
ママ友づきあいの悩みからアルコールに依存する女性も
斉藤氏の見解では、性別役割分業の環境下において、男性は仕事に依存(ワーカホリック)することが他の依存症にトリガーとなり、女性は育児や介護などケア労働のストレスから依存症に陥っていく傾向にあるといいます。
新刊『男尊女卑依存症社会』では、アルコール依存症に悩む若い女性が増えているなか、「ママ友づきあいのストレスが原因でお酒が手放せなくなった」というケースも取り上げられています。
「個人名ではなく、あくまで『〇〇ちゃんのママ』と役割で呼び合うなど、ママ友はある意味でとても特殊な人間関係ですよね。そうした環境においては、うまく適応できる人もいれば、できない人も当然います。
よくあるのは、ママ友コミュニティに適応できない人が、幼稚園などの送迎で緊張状態に陥ってしまい、それを一時的に和らげるため送迎の前にお酒を飲んでしまうというパターンです。
それまで見聞きした情報や世間からの視線によって『女性(母親)としてこうあるべき』という思いを内面化して、『生きづらさ』を感じている方は多いです。特に子育てに関しては『手をかければかけるほど、良い母親になれる』という旧来の考え方も根強い。
そのため、母親同士の付き合いにも積極的に参加してうまく立ち回ることで、役立つ情報を仕入れたりコミュニティに溶け込まねばらない、というプレッシャーに追い込まれれば追い込まれるほど孤立し、『生きづらさ』がさらに肥大化してしまうのです」