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障がい者の恋愛を描いたドラマ『初恋、ざらり』で、専門家が唯一「違和感を覚えた」シーンとは?プロデューサーに聞く

第1話冒頭、いきなりの性描写の狙いは

 ドラマ『初恋、ざらり』の面白さは、ざくざくろ氏の原作漫画『初恋、ざらり』(連載:コルクスタジオ/単行本:KADOKAWA)を忠実に再現している点が大きい。実際、1話冒頭から、コンパニオンとして働く有紗が男性客に性行為を強要される、というシーンも原作通り描かれていた。とはいえ、いきなり過激なシーンから始まると視聴者にネガティブな印象を与えかねない。  このシーンをカットするか、もしくは後半に回想シーンとして登場させても良かったのではないか。北川氏は「このシーンは絶対やらなければいけないと思っていました」とキッパリ。
ざくざくろ『初恋、ざらり』

ドラマ制作の羅針盤ともなった原作/ざくざくろ『初恋、ざらり』(KADOKAWA)

有紗は『必要とされると拒めない』『自分の存在価値に迷いのある』という人間であることを伝える、重要なシーンです。  もちろん、1話冒頭からということには迷いがありました。ただ、本作を制作するうえで『原作の良さを表現しよう』ということを一種のスローガンのように現場で共有しており、『迷ったら原作に立ち返ろう』という認識がありました。そのため、『原作では冒頭からこのシーンがあるのだから、そこを変えてしまったら視聴者に伝わる有紗の人物像まで変わってきてしまうかもしれない。ドラマでもやはり冒頭は同じにしよう』ということで撮影しました」
「初恋、ざらり」

©「初恋、ざらり」製作委員会

 徹底した原作へのリスペクトを口にしたが、「原作通りですと、どうしてもドラマの話数が余ってしまうため、原作にはないオリジナル展開も入れています。例えば、原作ではあまり描かれていない有紗の友達の友子(高山璃子)にスポットライトを当てたストーリーも加えました」と、原作ファンが新鮮に楽しめるストーリーもドラマで見られると語った。 【関連記事】⇒知的障害のある娘が「公園で暴れ回った」悲しい理由。両親は娘を抱き、通行人に謝り続けた|ドラマ『初恋、ざらり』

専門家の指摘が入ったシーンとは

 本作では有紗が軽度知的障害と自閉スペクトラム症を抱えていることもあり、専門家が監修している。専門家からはどういった指摘や意見があったのか。  北川氏は「実はほとんどありません。それだけ原作者のざくざくろ先生が障がいに深い理解を持って描き上げたからだと思います」と回答しつつ、「ただ、僕が覚えている限りでは一点だけ指摘が入ったシーンがありました」という。
「初恋、ざらり」

©「初恋、ざらり」製作委員会

「6話で有紗と岡村の勤務先の所長に誕生日プレゼントを送る予定だったのですが、その誕生日プレゼントが無くなるというシーンがあります。当初の台本では、有紗は先輩の湯川(尾上紫)がプレゼントをうっかり捨ててしまったことに気付き、『自分がやりました』と身代わりになる予定でした。  これについて専門家の方から、湯川がやったと気付くことも、咄嗟(とっさ)に空気を読んで身代わりになることも、直感的な力が必要になるため、それは有紗には難しいかもしれないというご意見をもらったんです。そこで、もしかしたら自分がやったかもしれないと、有紗が『自分がやりました』と告白する方向に台本を修正しました。  ちなみにこのご指摘も、あくまでも“有紗が”ということなので、全ての知的障害者や発達障害のある人に当てはまるものではありません」
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未来では「普通の恋愛ドラマじゃん」と思ってほしい
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