
私は当時、腰痛や肩こりがひどくて整体に通っていました。そちらの整体が気持ちよかったので、がんの治療をしながらでもときどき通ってよいか聞きたいと思っていました。抗がん剤では免疫力も落ちるとのことだったし、整体と併用できたらよいなと思ったのです。
そこで先生に「手術をはじめ治療はもちろんこちらでお願いするつもりですが、治療中に整体など、別の施術を受けても問題ないですか?」と聞きました。もう少し言い方は違ったかもしれませんが、とにかくその質問で先生の顔色が変わりました。
ぶっきらぼうで口数が少ない先生が、急にスイッチが入ったように大声でまくしたてました。
「他で治療を受けたいなら、そっちに行けばいいじゃないか! なんのデータもないくせに、そうやって〇〇の病院(名前は忘れました)に行って、治らない治療を受けて、手遅れになって帰ってきても知らないですからね!!」
と吐き捨てるように言われたのです。
私は地元の小さな整体院に行っていたので〇〇の病院、が何かはわからないのですが、怒鳴られながらも、どうやらトンデモ治療を提唱する病院のことを言っているのかなぁと思っていました。
混乱しながらも、先生がわたしの質問をわたしの意図と違う受け止め方をされて、わたしが非科学的療法を受けようとしていると勘違いされたのだろうなというのだけは理解できました。
不安と緊張でドキドキしながら初診で訪れ、いきなり先生にまくしたてられて驚きとショックのあまり固まってしまった私。その場にいた看護師さんが慌ててフォローに入ってくれ、「とにかくまずは精密検査をするので、あとは診察室の外で私たちとお話ししましょうね」と言ってくれました。
先生は、検査の結果が出る頃に、勝手に次回の診察予約を入れて、予約表をわたしの前に突き付けて、まさかの初診終了。
思わぬ展開に唖然としたまま看護師さんに案内されて診察室から出ました。少し人が少ないエリアに行き、看護師さんが「ごめんなさいね、先生ちょっと怖かったよね」とフォローしてくれました。
私はショックと怒りで混乱してしまい、隣にいる看護師さんは悪くないのは分かっていても、怒りを抑えられません。
「ここの病院はがんの人しか来ないから、『がん慣れ』しているのかもしれませんが、患者は初めてのことで不安です。ここでは患者さんの不安な気持ちに寄り添うことはしないのですか?」と気持ちを吐露しました。
看護師さんは「先生はちょっと気難しいときが多くて……昔はそこまでじゃなかったし、いい先生なんですけどね……」とフォローを入れつつ、こう話してくれました。
「でも、患者さんひとりひとり、みなさん不安なのはわかります。患者さんが多いので、先生は長く時間が取れないことも多いですが、説明不足だったり、不安な気持ちになったときは、私たちがしっかりフォローしますので、なんでも相談してください。相談窓口もありますので、安心してくださいね」
優しくそう言ってもらえて、少し気持ちが落ち着きました。そして診察室では聞けなかったこれから予想される治療の流れや、かかる時間などをざっくりと教えてもらいました。