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知的障害のある女性が職場で「絶望した」理由に胸が痛む…周りの優しさが生んだ“悲劇”|ドラマ『初恋、ざらり』

どう対応するべきだった? 正解のない問い

 9話は、“周囲からは気付かれにくい障がい”を抱える有紗のような人が職場や身近にいた場合、どのように接するべきか? ということを考えさせる内容だった。その人が何かしらの失敗をして自信喪失した時、どのように言葉をかければ良いのだろうか
「初恋、ざらり」

©「初恋、ざらり」製作委員会

 岡村は意気消沈する有紗に、「頑張ったんだって」「お疲れ様」と笑顔で声をかける。ただ有紗にとって、優しい言葉を投げかけられることは、「できない自分を肯定しろ」というメッセージでしかない。実際、「それでいいと言ってくれる優しさが苦しい」と心の中で口にしており、より有紗を追い詰める形になった。  とはいえ、ミスに対して叱責すれば、より一層自分自身を責めてしまうはずだ。つまりは、優しくすることも厳しくすることも正解ではないようだ。大前提として、岡村のような(有紗にとって)“普通”の人が声をかけること自体、間違っているのかもしれない。思わず「自分だったらどう声をかける?」と自問自答したくなる展開だった。

他の作品にも障がいのある人物は登場するが……

 なぜここまで「どう声をかければ良いのか?」ということを考えたくなってしまったのか。それは有紗がとても稀有なキャラだからである。  これまでも多くの漫画実写化作品に、知的障害や発達障害を抱えるキャラクターが登場している。例えば『ドラゴン桜』(TBS系/2021年)の登場人物で、発達障害のある生徒・原健太(細田佳央太)。原はその障がいのために聴覚的短期記憶能力が低いが、視覚から得た情報に関する記憶力はかなり優れていた。原をはじめ様々な作品に登場する障がい者は、障害を抱えているものの“その代わり”として突出した能力が与えられる傾向が強い。  従来の障がいを持つキャラであれば、“その代わり”があるため、かけられる言葉が簡単に見つかる。なにより“その代わり”のおかげで自力で現状を切り開くこともでき、言葉を探す必要に駆られることもない。 【関連記事】⇒障がい者の恋愛を描いたドラマ『初恋、ざらり』で、専門家が唯一「違和感を覚えた」シーンとは?プロデューサーに聞く
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有紗が「稀有なキャラ」である理由
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