「ご紹介した方法は、比較的夫婦関係が良好で、セックスについての問題“だけ”があるケースで効果を発揮します。
これに該当しない場合は、別のアプローチが必要です。例えばレスから夫の浮気や不倫が発覚し、妻側が傷ついているところからスタートする場合です。このような夫婦は信頼関係が崩れているので、まずは時間をかけて心から信頼出来る関係に戻すのが先です。
女性側は、帰りが遅いだけでドキドキしてつらく、また疑ってしまう自分が許せずに苦みます。セックス以前に、態度や誠意を男性側が見せることと、だんだんと関係が戻っていくことが優先されます」
こうしたご相談に、潮さんは女性には「怒っていい」と、カウンセリングを通して伝えるといいます。女性の中には、子どものことを考え離婚を踏みとどまり、怒りを押し殺してしまう人も少なくないといいます。
しかし怒りを心の中に残していると、悩んで鬱などになってしまう人もいるため、適切な怒りを感じていくことが重要になります。
「あとは、夫婦の“不公平感”が怒りとして溜まり、相手に失望しセックスに向き合えないケースもあります。こうした場合は、まず溜まっている怒りの元を見つけ、話し合う必要があります。
例えば、「大病したときに夫に心無いことを言われた」とか「義両親の対応を自分に任せっきりにされた」などです。
こうした怒りが蓄積され相手を信頼できず、気持ちが向かないことはよくありますので、話し合って関係に公平さを作っていくことが大切です」

今回のお話から分かるのは、セックスレスの悩みは、マンネリや性欲の低下など、性に直結した問題にとどまっていないことも多いということです。
相手への失望感やコミュニケーションの不足、蓄積した怒りなどは、セックスレス解消に関係なく、取り組めると夫婦関係の改善に役立ちます。
「日常的に会話がなかったり、片方がレスの話題に逃げ腰だったりすると、そもそもの基本的な信頼関係の構築が重要になります。
またセックス自体に関心が薄い方の場合は、自分の中でのドキドキ感を高めたり、漠然とした性欲と向き合ったりすることも大切です。
40代以降のご相談者さんの中には、性器を見たことも触ったこともなく、性自体にまったく関心を持ったこともないという方もいます。
そういう方に、性欲を今からバンバン高めるというのは難しく、かといって奥ゆかしいままでは解決策に至りません。こうした場合は、性に対する危機感や関心と向き合い、うやむやにしないなども大切になります」
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正直なところ、筆者はインタビューを行うまで、夫婦のセックスレス解消は非常に難しく、一番の解決策は徹底した予防だと思っていました。
しかし「セックスの再定義」や「ルーティン化」といった意外なアプローチがあることを知り、またそうした取り組みを2人で進めるためにも、夫婦のコミュニケーション、すなわち絆をよりメンテナンスしていくことの重要性を感じたのでした。
【潮英子(うしお・えいこ)】
セクシュアリティカウンセラー、公認心理師。日本語教師や航空会社勤務を経てお茶の水大学大学院にて夫婦関係を研究。現在はセックスレスや性依存等のセクシュアリティ、夫婦関係、女性のキャリアの悩み相談に携わっている。著書『
女性カウンセラーが教える50代からのhow to SEX』(光文社)、共著『雑談力』(明日香出版社)
<取材・文/おおしまりえ>
おおしまりえ
コラムニスト・恋愛ジャーナリスト・キャリアコンサルタント。「働き方と愛し方を知る者は豊かな人生を送ることができる」をモットーに、女性の働き方と幸せな恋愛を主なテーマに発信を行う。2024年からオンラインの恋愛コーチングサービスも展開中。X:
@utena0518