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超エリート灘高生が女子大生と学ぶ性教育を、ネットで“合コン”と揶揄。背景に「男子校への偏見」か

性に関することで、つまずいたことがない人は、きっといない。メディアで紹介される先進的な性教育の授業を見聞きしては、「こんな授業を受けたかった」「そしたら、あのつまずきは回避できたのでは」と思う大人世代は多いはず。子をもつ親なら、「ウチの子の学校でもこんな授業を」とも考えるだろう。
(画像:灘中学校・高等学校公式サイトより)

(画像:灘中学校・高等学校公式サイトより)

兵庫の名門男子校、灘高等学校(以下、灘高)で今夏行われた授業は、まさにそう思わせてくれるものだった。授業といっても教師が生徒に教科書の内容を説くという、一方向的なものではない。近隣の甲南女子大学から学生を招き、グループに分かれて対話をすることで「生理」「性的同意」について知り、考えるという内容だった。 教育ジャーナリストのおおたとしまささんがその模様を伝えた「『性的同意ってなに?』灘校生が甲南女子大生と学ぶ、生理の悩みとデートDV」というweb記事(『JBpress』9月19日掲載)が、SNSで思いがけない反響を呼んだ。 すばらしい取り組み、どちらにとっても得るものが多いだろうとその意義を感じ取る人が多い一方で、男子校と女子大の組み合わせを“合コン”と称したり、ポルノ的に解釈したり、偏差値の差を茶化したりといった投稿も多かった。「男子校×女子大×性教育」という組み合わせによって、ハレーションが起きたのだ。

男子校ノリって本当にあるの?

「男子校の中も女子大の中も、いまどきの性教育も、どれも実際に見たことがない人が多いので、妄想が3乗ぐらいになってふくらんじゃったのでしょう」と、おおたさんは苦笑いする。 おおたさんが特に気にかけたのは、男子校に対する偏見だ。男子校の生徒たちが年中、男子校ノリで過ごしているかのような先入観が見てとれた。
灘高性教育202310

※写真はイメージです(以下同)

「男子校ノリって、男子校の日常ではないですからね。異性からの評価を気にしながら学校生活を送る人たちが、ときたま男性だけになったときに、日ごろ抑圧された本音が吹き出し、悪ノリするーー男子校ではその機会がそもそもないんです。 ただ、中学生ぐらいだとまだそんな振る舞いをする生徒はいますね。でもそのうち気づくんです、このノリつまんないなって。そしてイチ抜けた、ニ抜けたとやめていく」

男子校はミソジニーの温床か

男子校はホモソーシャルな空間であり、そこで男子校ノリに触れる時間が長いほど、ミソジニーの考えに染まってしまう。それは、性のつまずきを引き起こし、同時に自分の身の回りの人をもつまずかせることになる……。そうした考えから、「男子校にこそ性教育が必要だ」という声もよく上がる。 しかし、灘高の授業に記事を通して触れ、おおたさんの話を聞いていると、その前提に疑問がわいてくる。 現在おおたさんは、「男子校の性教育、ジェンダー教育」を取材している。灘高の前には、巣鴨高校(東京)でドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を題材にした授業に立ち会い、記事にした。そのほかにも、すでに広島学院(広島)、聖光学院(神奈川)、桐朋高等学校(東京)などの取り組みも見てきた。
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なぜいま、名門校が性教育に取り組むのか
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