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34歳俳優の王子様役が“お笑い”にならないワケ。新作での適役っぷりを読み解く

誰よりもマジカルな存在

 ともあれ、この驚きの役をじっくり見ていこう。物語の主役はタイトル通り赤ずきんかと思いきや、冒頭直後にシンデレラが登場し、キムラ緑子扮するコミカルな魔女バーバラとギャグセンス満載のやり取りを繰り広げる。  さらにもうひとりの若い魔女テクラ(桐谷美玲)まで現れ、ドレスに身を包んだ赤ずきんとシンデレラが、ムロツヨシ演じるネズミのポールが走らせるかぼちゃの馬車で舞踏会へ向かう。  福田雄一監督らしい荒唐無稽にも思える展開ながら、夜の森の先に見えるお城が映ると、結構ワクワクしてくる。何せ城内には、リアル王子、岩田剛典が待っているのだ。 「早くそのお姿をひと目見たい!」と思わせる彼こそ、赤ずきんやシンデレラ、はたまた彼らに魔法をかける魔女よりもマジカルな存在ではないか。

お笑い草にならない王子のビジュアル

 うまく入城できた赤ずきんとシンデレラは、さっそく王子と謁見することになる。王様に付き従い、見目麗しい姿で客たちの前に登場するが、ここでまたしてもギャグセンスが炸裂する。  王様役が福田組の常連俳優、佐藤二朗なのだ。うっすら想像してはいたが、いやいや佐藤二朗から岩田剛典の顔は絶対に産まれない。そんなギャグ王様の隣で凛としてたたずむ王子。その名もジルベール。  ビロードのような響き。ジルベールと言えば、竹宮惠子の漫画『風と木の詩』の美少年の名前を思い出すが、割りとロン毛な王子のビジュアルは、池田理代子の『ベルサイユのばら』の主人公オスカルのような男装した女性と見紛うほどの美麗さである。 「普通だったら漫才師みたいになるところを」と赤ずきんが言うように、これは確かに岩田以外の俳優ではお笑い草だろう。シンデレラの元へ行き、「踊っていただけますか?」と手を伸ばすときの声色ひとつとっても完璧な王子様ぶりである。
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唯一魔法が解けない表情
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