最初に取り上げるのは、「夫に早くあの世に逝ってほしい妻」。
相談内容をまとめると「夫はマスコミ関係勤務、妻は専業主婦、小4と年長の女の子との4人家族。結婚14年目。育児はワンオペ、コミュニケーションも話し合いもなく、妻は長年孤独を抱えている。子供を思うと離婚に踏み切れない」。
よくある問題ともいえますが、根深く潜む本当の問題は何なのでしょう。

写真はイメージ(以下同じ)
本書は相談者と安東さんとの対話形式で進んでいきます。対話の中で妻は「すごく大好きな人と結婚した」と言いつつ、「今は一緒にいたくない」と苦悶(くもん)しているのです。
「子供がいなかったらずっと楽しい夫婦生活が送れていただろうと思う」とこぼす妻ですが、はたしてそれは真実でしょうか。
安東さんの見解は「感情の問題」。夫は仕事、妻は子育て。お互い忙しい中で言えなかったこと、聞いてもらえなかったことが「わだかまり」となって、大きく膨(ふく)らんでいったのです。
「感情の問題」を子供の存在にすり替えて、つらすぎる本質を無意識に避けていたのかもしれません。夫婦が向き合うべき事実に、妻は気づいたのです。
「夫婦にある問題のほとんどが、愛情が基盤になっている」と安東さん。「死んでほしい」という妻の思いも愛情の裏返しなのです。無関心だったら、憎しみという感情もわきませんよね。
わかってほしい妻とわからない夫。夫婦間で意思疎通ができないのは、相当なダメージです。そこで安東さんが提案するのが「アイメッセージ」。
たとえば「どうしてあなたはわかってくれないの」といった、あなた(YOU)が主語になる「ユーメッセージ」は抵抗感が生まれるといいます。
片や「私はあなたにわかってほしい」といった私(I)が主語になったメッセージは、相手にすんなり伝わるというのです。
今回の場合、現状維持をしつつ、妻自身の心のケアを同時に行う、という結論になりました。夫への愛情とやるせなさで苦しむ妻の心を、安東さんは労(いた)わったのです。