ハルキはとうとう、もう生きていてもしかたがないと歩道橋から飛び降りる決意を固める。まさに手をかけて体を浮かそうとしたその瞬間、深愛から電話がかかってくる。

「今日、おかあさんがいないからうちに来ない?」
ハルキは深愛の不倫相手・夏生の息子である。ふたりがちふゆに襲われたあと、病院で息子を迎えにきた夏生と3人が顔を合わせたとき、ちふゆは言ったのだ。
「
ハルキと彼女がどこかへ行っちゃおうかという話をしていて、私はそれはダメだよーって言ったの」と。夏生は、なぜ息子が深愛を知っているのか疑問に感じており、ハルキは父と深愛との関係を疑っている。自分が憧れに近い感情を持っている深愛が父の不倫相手だと信じたくはない、だが父に嫌悪感をもっても深愛を憎めないのは彼にとってはつらいところだろう。
深愛はなぜ、ハルキを誘い出したのか。彼女の心はあくまでも夏生にあるはずだ。ふみこに近づいたのは、早くよくなってスムーズに離婚してもらいたいからだった。途中からふみこへの共感が圧倒的に強くなってはいるが、当初の目的を忘れているわけではなさそう。
結局、自分の存在価値を高めるためにもふみこを利用しているように、ハルキのことも助けたいと思いながら利用することになってしまうのだろうか。
深愛を信じて、気分転換に髪を切ってもらい、夫の不倫でつらかったことを聞いてもらっているふみこが気の毒に思えてくる。
「
深愛ちゃんがいてよかった」
そう言ってポロリとこぼしたふみこの涙に深愛も動揺するが、彼女は自分もまたふみこを苦しめている存在だという認識がない。このアンバランスな深愛の心のありようが、さらなる混乱を招くのではないだろうか。
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<文/亀山早苗>
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