――小学生のころから生きづらさを感じていたのはなぜだったのでしょうか。
有賀:幼稚園のころは明るい感じだったのですが、小学校に入ったころから内向的になっていきました。周りのコミュニケーションが活発になっていく過程で、人付き合いをすることが難しく感じるようになりました。
大人になってから振り返ると「あのときは辛かったな」と思います。でも子どものころは自分のいる環境を客観的に見られないので自覚できませんでした。
ゲームでいうとダメージを受けているのに体力ゲージが見えないようなものです。
たぶん当時からうつっぽいところがあったんだと思います。小学校で忘れ物が多かったのですが、ストレスがかかり過ぎていてそうなっていたのかもしれません。
――どんなことがストレスになっていたと思いますか?
有賀:親に対して嫌な感情を持っていたわけではないのですが、家庭が荒れ気味だったことだと思います。姉が反抗期で家の中で大暴れして母と喧嘩をしたりするので、その環境に疲れていました。それで持ち物や宿題を忘れて先生に怒られて、さらに疲れるという負のループだった気がします。
――小学生のころから「希死念慮」があったことが描かれていますが、どういう感覚だったのでしょうか。
有賀:うつが酷いときは自分の行動が制御できない感覚がありました。例えば、命に関わること以外にも、「今すぐどこかに遊びに行かなくては気が済まない」とか、
自分の行動が自分で決められない感じです。それを漫画では「脳から指令がくる」と表現しました。正しい例えかは分からないですが、痒いときにその部分を掻かずにはいられない感じに近いと思います。
また、自分がいる今いる場所ではない「異世界に行きたい」という思いが強くありました。
――小学生のころに、命を絶つ行動をしそうになったときに思い止まったのはなぜだったのでしょうか。
有賀:「死ぬのが怖い」というのがすごく大きかったです。
――周りの人に相談したことはありましたか?
有賀:そうできたらよかったのですが、自分がストレスや悩みを抱えていることを自覚できなかったので相談することができなかったです。例えば、虐待やいじめを受けていても、それが当たり前になっていて、辛いと自覚できない子どもは沢山いるのではないかと思います。
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『ウツパン 消えてしまいたくて、たまらない』2話(12/22までの限定公開)
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<死にたいと思ってしまう方、周囲の人から死にたいと相談された方へ>
以下のサイトや書籍がご参考になれば幸いです。
「こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト」
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/index.html
「あなたがゲートキーパーになる時」
監修・太刀川弘和(茨城県ゲートキーパー養成研修用映像)
https://plaza.umin.ac.jp/~dp2012/resource.php#1
『自殺学入門―幸せな生と死とは何か』
監修・末木新(金剛出版)
『つながりからみた自殺予防』
監修・太刀川弘和(人文書院)
(『ウツパン 消えてしまいたくて、たまらない』より)
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<取材・文/都田ミツコ>
都田ミツコ
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。