――子どもを守るべき親が、子どもを守っていないということですね。
芙和「
前々回の記事で、子どもの着替えや排泄などプライベートな動画や写真を投稿すると、内容によっては犯罪に巻き込まれる危険性があるというお話をしました。でも、犯罪に巻き込まれる以前に『
親子関係が壊れてしまう危険性もあるよ』ということもお伝えしたいです」

――具体的に、どういうことが起こりうるのでしょうか。
芙和「SNSに投稿した動画や写真は、一生ネット上に残ります。それは、たとえ投稿を削除してもです。
子どもが大きくなった時に、その動画が原因で傷つく可能性もありますよね。
また、自分の個人的な情報を勝手にSNSにあげた親に対して不信感も抱くでしょう。自分が泣いている顔や苦しんでいる時に寄り添ってくれるどころかカメラを向けてくる親と、信頼関係を築いていくのは難しいと思うんです」
子どもが嘔吐する様子を、SNSに投稿した母親の後悔
――小さい頃は気づかなくても大人になってから、親にされたことに違和感や拒否感を抱くケースもありそうです。
芙和「以前、あるお母様から『親子関係が修復できない』という相談を受けたことがあります。その方は、家族旅行の様子を動画で撮影しSNSに投稿したそうです。
動画では、お子さんが気持ち悪くなって嘔吐した場面も撮影していたとのことでした。
お子さんは動画を見たクラスメートから嘔吐したことをからかわれ、心無いあだ名をつけられたとお母様に泣いて怒ったそうです。そこから、
お子さんに何を言っても聞いてもらえなくなってしまいました」

――お子さんからしたら、親に裏切られたという気持ちがありそうですよね。
芙和「もし自分が嘔吐している場面を家族に撮られてSNSにあげられたらどうか? 苦しんでいる時にケアしてくれるどころか撮影をされていたらどう思うか? もう少し想像と共感力があれば、このような問題も防げていたのではないでしょうか。
子どもを“一人の人”として尊重することが大事です。国連で採択された『子どもの権利条約』にもあるように、大人と同じように一人の人間として、子どもの人権を認めて守らなくてはいけない。このことを、何度でも思い出してほしいと思います」